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  • 小夜×大薗彩芳

  • PASHA STYLE Vol.5 PICK UP ARTIST "SAYO" 撮影現場ルポ
    【二つの軸が生み出す独自の世界】     いけばな草月流師範   大薗彩芳

  • 撮影:大森和幸(ooxo)

    • ヘアメイクのワタナベさん、モデルの小夜さん、そして大薗さん

    • 引き算の美学をベースに構想を膨らませる

  • 冷たい雨の降り続ける11月末の自由ヶ丘。スッカリ陽も落ち、濡れる路面を家路に急ぐ人々達。駅から程近いその撮影スタジオでは、いけばな作家、写真、ヘア&メイクアップ、そしてモデル_____ 様々な才能がひとつになり“作品”が生み出された。 

    今回の撮影現場ルポは、いけばな作家、草月流師範、大薗彩芳さんにお話を伺いました。

    ※以降 
    イ):インタビュアー
    大):大薗彩芳

    イ)作品を作り上げていくプロセスを拝見し、“人間の頭”も優秀なアーティストの手に掛かれば、いけばなアートを展開する空間に成り得ることを知り、感銘を受けました。では早速お伺いさせて頂きたいのですが、まずズバリ今日のコンセプトは?

    大)コンセプトですよね? どうしましょう。笑。 
    モデルの小夜さんの情報のみ頂いていたので、彼女に合いそうな色味とか、形を想像して、それをベースに、って感じですね。はじめにテーマやコンセプトが在って、というよりは、その場のインスピレーションに、カラーと形で遊んだ、という感じですしょうか、今日に関しては。
    いつもはテーマを予め決めてから作り込んでいく事が多いのですが、今日は『敢えて決めない!』感じでした。笑。これは普段、花器に活ける時も花器の色彩やシェイプ、フォルム、大きさ等々を鑑みながら創作する対象を決めていく感じに似ていましたね。

    イ)その場での閃きやインスピレーションに基づいて創作された今日の作品にご自身で点数をつけるとするといかがでしょうか?

    大)100点だと思います。笑。 モデルの小夜さんがとても上手だったので......モデルさん、写真家さん、ヘアメイクさん......トータルで100点満点の作品になるんじゃないかなと思ってます。

  • インスピレーションが少しずつ具現化していく瞬間

  • 空間が形作られていく

  • イ)今夜の様に現場で即興が求められる場合は、何から着想されたのでしょうか?

    大)いけばなを制作する際の重要な要素のひとつが“花器”だと思っています。そして、今回、その花器に当たるのがモデルさんでした。今夜のモデルの小夜さんの場合だと、衣装が黒のロングドレスで、シルエットが台形で、その上に彼女の小さな頭が在る......まず色に関しては、ドレスの黒にちょうど合う色味を選んで、シェイプやフォルム、形に関しては、この彼女の頭の小ささに対して、その上を飾るいけばなの大きさ、シルエットがアンバランスだとすると面白いかなぁ、と。

    イ)今晩の様な場合、いけばな作家としてのご自身の作品を仕上げる、というミッションとは別に、その作品自体が被写体として写真作品となり、印刷、画面になった時にどうなるか?、という辺りはどこまで意識していらっしゃったりするものでしょうか?

    大)そこは中々難しい課題ですね。今日に関して言いますと、あんまり写真の最終的なアウトプットを意識せず出来た感じですね。今日は、僕にとっていい意味で自由にさせて頂けた、自由に出来たって、いう意味で、撮影頂いた写真家の大森さんとの共創作業が凄く楽しかったので、あそこまでサイズ感、高さも出してしまった、出せた、っていうのがあります。

    イ)モデルさんの頭を花器や剣山に見立てて、その上に枝を使う、観る者にまで『大いなる広がり』を感じさせるイメージは、材料を準備、用意される時には出来ていたモノなのでしょうか?

    大)結論から言うと、そこまでの明確なイメージはなかったのです。 
    しかし、僕は、いけばな作家なんですよね。“いけばな”に代表される日本の文化、美意識は、『引き算の文化』と言われていて『空間を埋めてはいけない』のですよね。『空間を埋めること』、を時に意図的に手法として使うことはあっても、一般的にはNGとされていて......その対極に西洋文化、足し算の文化、フラワーアレンジメントがある、って考えた時、いけばなの世界では、例えば水盤に活ける時も、真ん中に剣山を置かないことが多いんですよね。
    観る人から見て、斜め前に置いたりして、あえて水面を見せるんです。水面を見せることによって、それに対して花々や枝がどの様に置かれると、水面含めた全体が、森の広がりや、湖や海の広がりが観る人の空間イメージの中で広がっていくか? そんなことまでを創作出来るのが“いけばなの文化”なんですよ。

    今日は、少しフラワーアレンジメント的なアプローチで、中央に大きな集合体を造りつつも”引き算”で『埋め過ぎない』ことを意識しました。そこにプラスアルファで枝類を加えたり、あの赤い枝をたすことで、“上に伸びる”感を引き立ててみたり、黒い枝を入れる事で“空間の広がり”、“抜け”も意図的に創ったり......。 

    • 撮影:大森和幸(ooxo)

  • 撮影:大森和幸(ooxo)

  • イ)先ほど名刺を2種類頂きました。いけばな 草月流の師範、としての名刺と某有名IT企業のビジネスマンとしての名刺......大薗さんにとってこの<ふたつの顔>は、どの様なバランスをお持ちなのでしょうか?

    大)ふたつの軸をバランス良く棲み分けていて......基本的には曜日で分かれていたりします。ウィークディは『ビジネスマン』で、土日祝日は『お花』って感じですね。もうここはカチッと分けて、カチッとやってる、って感じですね。笑

    イ)なるほど。ビジネスマンとして事業を創造する“顔”と、伝統文化、自然に生きるモノと向き合う“引き算の世界”、このふたつの世界観は大薗さんの中でどの様に共存しているのでしょうか?

    大)共通している部分、は当然の如く在ると思っています。と同時に、非常に相反する部分、相対的な部分も在る、と思っているのですが......この双極をバランス良く持って日々過ごせていること、が独創性を導き出してくれているのではないかなぁ、と思っています。
    ひとつひとつを混在させていく、共存していくこと、は今の時代、可能なのかな?、と思っていたりするのです。 いけばなとIT、一見なんの接点もない様に見える、このふたつの世界で同時に活躍している人って、まだすごく珍しいことだと思うんですね。異なるふたつの世界の両方に“軸を持っている”。そう云うところは、僕のひとつの“強み”や“独自性”になるのだろうなぁと思っているし、感じていますね。  

    イ)いけばな作家、大薗彩芳の世界、独創性を生み出している遠因に、この“二軸”があったのですね。ありがとうございました。
     
    大)ありがとうございました。こちらこそ楽しかったですし、記事も楽しみにしていますね !

    TEXT&PHOTO:Jean-Henri Grandchester & Yusuke.k