• 記事検索

  • F5.6でも十分以上の高い解像力を画面全体で楽しむことができます。画面の端の木々の葉も解像感は十分です。

  • [連載:マニアックレンズ道場2]デジタル一眼レフ向け最上位クラスのAF50mm
    Tokina opera 50mm F1.4 FF

  • シンプルで精悍なレンズデザインになっています。ボディと組み合わせたときにすっきりとなじむのがうれしいところです。

    • 距離計が表示されて小窓が付いています。また、防塵・防滴に配慮されているため、マウント部分にはゴムのシーリングがみえます。

    • AFとMFの切り替えスイッチなどは鏡筒部分に取り付けられています。レンズ取り付け時の位置表示も視認性が高く見やすいです。

    • フィルターメーカーとしても有名なケンコー・トキナーのレンズだけあり、フードを装着した状態でもPLフィルターなどが回せるしくみになっています。

  • マニアックレンズ道場(←PASHA STYLEの編集長が命名)の齋藤千歳(本人にはマニアックだという自覚はない)です。
    クリスマスもほとんど外に出ることなく、自宅で「解像力」「ぼけディスク」「周辺光量落ち」「最短撮影距離と最大撮影倍率」を撮影し、電子書籍を制作していました。正月もこのままです。

    そんな私の気になるレンズをPASHA STYLEの読者のみなさまに紹介している「マニアックレンズ道場」の第2回はTokina opera 50mm F1.4 FFです。
    私のなかでは実写チャートの結果を見直す度に評価の上がるデジタル一眼レフ向け最上位クラスのオートフォーカス(AF)標準単焦点レンズになっています。

    みなさんは2018年からの35mm判フルサイズミラーレス一眼の勢揃い状態で完全にミラーレス化しましたか。
    私は一部35mm判フルサイズミラーレス化しましたが、いまだに「動くもののときは……」などと思い、デジタル一眼レフも残しています。
    ニコン D850やキヤノン EOS 5D Mark IVメインで、ミラーレス一眼はサブという方も少なくないでしょう。
    いや、実はまだ、どのミラーレス一眼にするか、悩んでいるという方がもしかするといちばん多いのかもしれません。
    「一眼レフ用レンズはミラーレス一眼で使えますが、ミラーレス一眼用のレンズは一眼レフでは使えません」。
    このことは予想以上に大きなハードルになっているのではないでしょうか。
    ミラーレス一眼ボディと一眼レフボディの両方が混在する状況、または現在一眼レフで、これからミラーレス一眼を買うという状況では、レンズアダプターを使えば高性能な一眼レフ用レンズは使い回しが可能なわけです。
    しかし、逆はできません……。

  • 今回のテストに使用したのはキヤノン EFマウント用です。カメラ本体との情報をやりとりする端子が並んでいるのがわかります。

  • ところで、みなさんが普段使っている一眼レフ用のAF標準レンズは、いつ発売されたものですか?
    10年前くらいだとかわいいほうではないでしょうか? モデルによっては30年以上前の光学設計がそのままというレンズもあるはずです。
    10年前でデジタルカメラは2000万画素程度、20年前に至っては300〜400万画素あたりが一般的でした。
    それ以前になると当然フィルム時代なわけです。
    この20年間でみなさんは何回カメラを買い換えましたか。
    カメラ本体は何度も買い換えたけど、AF50mm標準レンズはずっと同じものを使っているという方も多いのではないでしょうか。
    カメラはこれだけ進化したのに、レンズは30年前にフィルム用に設計されたもので4000万画素や5000万画素といった超多画素機の画質を支えられるのでしょうか。

    答えは2018年末に出たように思います。
    35mm判フルサイズのミラーレス一眼システムをみたときにほぼ全員が思ったでしょう。
    「ボディはちょっと小さくなったけど、レンズがデカい」。
    4000万画素や5000万画素の多画素の性能を十分に引き出すAF標準レンズは、思っていた以上にデカいのではないかと多くの人々が気付いた瞬間だったといえるでしょう。

    Tokina opera 50mm F1.4 FFは、この35mm判フルサイズミラーレス一眼の新システムにカメラ業界の注目がすべて集まっている2018年10月末のタイミングで発売された最大径80mm×全長107.5mm、質量約950g、実勢価格13万円前後(2019年12月独自調べ)の超多画素時代向けの一眼レフ用AF単焦点標準レンズです。ニコン Fマウント用とキヤノン EFマウントが用意されています。

    • 『Tokina opera 50mm F1.4 FF 機種別レンズラボ』(https://www.amazon.co.jp/dp/B07LBT4W6K/)から抜粋した解像力チャートの一部です。開放から周辺部まで高い解像力が観察されます。

    • 画面全体に均一で高い解像力を発揮するF8.0で撮影した1枚です。解像力の高さはもちろんヌケのよさも感じられます。

  • ピントの合ったシーサーのシャープな描写、そして背景のぼけていく様子にザワつきなどを感じることもなく、美しいぼけが観察されます。

  • 「解像力」「ぼけディスク」「周辺光量落ち」「最短撮影距離と最大撮影倍率」の実写チャートを撮影し、掲載しているAmazon Kindle電子書籍『Tokina opera 50mm F1.4 FF 機種別レンズラボ』(https://www.amazon.co.jp/dp/B07LBT4W6K/)のデータを元にTokina opera 50mm F1.4 FFの光学性能を解説していきます。

    解像力については、実写チャートの結果から見ると中央部分は絞り開放のF1.4からまったく問題はなく解像力もコントラストも十分です。F2.8でさらにコントラストが上がり、F5.6でもう1段上がり解像力のピークになります。素晴らしいのは周辺部で開放のF1.4では中央部分に比べるとコントラストは低いものの解像はされており、F2.8でコントラストアップ、F5.6でさらに、F8.0前後では中央部と周辺部の解像力の差はほとんど観察されないレベルのピークとなります。
    また、絞り開放の周辺部においても色収差や歪曲などもほぼ発生せず、非常に優秀な結果です。

    ぼけについては、周辺部分では口径食によるぼけの形の変形があるものの、9枚羽根の円形絞りを採用しているため中央部分では開放ではほぼ真円、F2.0あたりまでは真円に近い形を保ちます。ぼけの描写については、非球面レンズの影響による玉ぼけに同心円状のシワが発生する玉ねぎぼけは少なく、ぼけのフチに発生する各種収差が原因と思われる色付きも軽微です。ザワつきの少ない素直で溶けていくようなぼけが楽しめます。

    周辺光量落ちについては、絞り開放のF1.4では明確に、絞るとわずかずつ改善し、F2.8でほぼ目立たないレベルに改善します。ただし、F2.8以降は絞っても周辺光量落ちの量はほぼ変化しないので、周辺光量落ちの改善のために絞るのはF2.8までで十分といえます。とはいえ、Tokina opera 50mm F1.4 FFの魅力は絞り開放から周辺部までの高い解像力にあるので、周辺光量落ちを避けるために絞るよりも、RAW画像も同時に撮影しておき、どうしても気になるシーンではRAW現像時に補正するなどの対処をおすすめします。

    最短撮影距離と最大撮影倍率については、40cmで0.18倍です。一般的な50mm単焦点標準レンズはだいたい45cm、0.15倍なので、いままでの50mm単焦点標準レンズに比べると寄れるといえます。従来の50mm単焦点標準レンズの弱点でもあったので、従来よりも少し使いやすくなっている印象です。

    Tokina opera 50mm F1.4 FFは、絞り開放から周辺部分までしっかりと解像し、しかもぼけも美しいという光学性能的に文句の付け所がない代わりにデカくて重くて高いという、2018年以降のミラーレス一眼用の高性能単焦点レンズと同じ傾向を示す数少ない一眼レフ用AFレンズといえます。
    実際のところ、ペンタックス Kマウント用のHD PENTAX-D FA★ 50mmF1.4 SDM AWを除くと一眼レフ用のAF標準レンズは、SIGMA 50mm F1.4 DG HSMの2014年発売くらいまで戻らないと、現在の超多画素一眼レフの性能を絞り開放から引き出すことを目的にしたレンズというのが見当たらないです。

  • 現状の数千万画素クラスのデジタル一眼レフの性能を引き出し、絞り開放から高性能が発揮できる大きさで設計され、AFがしっかりと使える一眼レフ用の50mm標準単焦点レンズは、非常に数少ないレンズといえます。
    今後も、ミラーレス一眼用並みの高性能を実現する一眼レフ用の標準単焦点レンズが続々発売される可能性はあまり高いとは思えません。
    撮像素子の性能的には現状、一眼レフも、ミラーレス一眼もほぼ差のない状態です。この超多画素一眼レフの性能を引き出し、ミラーレス一眼同等以上の画質が得られるTokina opera 50mm F1.4 FFは、現在所有しているデジタル一眼レフカメラの現役寿命を延ばします。しかもレンズアダプターを使えばミラーレス一眼との共用はもちろん、ミラーレス一眼に移行したあとも使える高画質でお得な1本といえるわけです。

    35mm判フルサイズミラーレス一眼ブームとそれに関連した数多くの新製品に埋もれて、あまり評価されていないように感じますが、いまだからあえてTokina opera 50mm F1.4 FFの高性能ぶりは際立つように感じるわけです。
    また、Tokina opera 50mm F1.4 FFについては、YouTubeのチャンネル「ぼろフォト制作委員会」(https://www.youtube.com/channel/UCT6ZnpxPkAqQFm8bQbt2FNA
    )でも詳細に解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
     
     
     
    【Text&Photograph:齋藤千歳】
    https://pasha.style/article/999

  • タグ