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【編集長の戯言】モデルの視線の行方
レンズを見ているのか、レンズの奥のフォトグラファーを見ているのか
ポートレイトというのは、モデルとフォトグラファー間のコミュニケーションでもあるのかなと思うんです。
仕事でもない限り、嫌いな人とわざわざ撮影をしに行ったりはしない。
とはいえ、自分が主軸でない撮影、初対面の依頼主、チームの誰かがキャスティングをしたモデルなど、作品撮りのパートナーとの関係性には色んな形があるというのも確かではあるけれど。
はじめて会うモデルもいれば、気が合うと何度も撮影させてもらっているなんてこともあるだろう。
もしその関係性が少なからずとも写真に出るとしたら、ファーストコンタクトから1回の撮影でどこまで仲良くなれるかもフォトグラファーの手腕の見せ所なのかもしれないね。
しかし、その「関係性」が写真に出ることなんていうのはあるのだろうか。
数年前に編集部の一員であり僕のアシスタントのユコちゃん(以下<ア>)と話をしていて感心したことがひとつ。
ア「オーさんの写真って空気感が素敵ですよね。」
編集長「空気感.......それって実際写真に出るものなのかな?」
ア「……出るんじゃないですか?」
編集長「そんなものかなぁ。自分ではよくわからないなぁ。」
ア「モデルさんの表情や視線を見てるととても素敵な距離感だし、リラックスして楽しんでいるのが分かりますよ。そういった空気感は写真に出ません?」
編集長「そうなのかなぁ。そういうのって写真に写るものなのかぁ。自分は普通にシャッターを切っているだけなんだけどな。」
ア「そこはみんな一緒かもですね。でもモデルさんとの関係性がちゃんとしているから、モデルさんはレンズではなく、レンズの奥のオーさんを見ているんだと思うんですよ。早く帰りたいって思ってたり、あまり気が乗らない時、モデルさんは、こっち見てと言われたら大体レンズ見ますよね。でもフォトグラファーと一緒にいいもの撮ろうと思ったら共感も含めて、こっち見てと言われたらレンズの奥に見えるフォトグラファーに視線を送りますよ。」
編集長「ヘぇ〜〜〜〜〜そ〜〜なんだ!!! 被写体やることないから知らなかったw」
ア「だから、オーさんの写真はとても素敵な空気感なんだと思います。」
なんて話を聞いて、眼から鱗。
びっくりした反面、とても深いなぁって感心したものです。
写るのかどうか、それはわからないけど些細な表情の変化や視線、仕草は、フォトグラファーが積極的にコミニケーションをとることで、モデルから引き出さなきゃいけないものなのかもね。
単にレンズを向けシャッターを切る。
そうではなく、一緒に楽しむことでレンズの奥の自分に意識を持ってもらうことも、素敵なポトレの真意なのかもしれない。
とか思うのです。