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  • [ 連載:マニアックレンズ道場4 ] VILTROX 85mm F1.8 II FE
    あえて選択したい ! コストパフォーマンスも高く高性能なポートレートレンズ

  

 

新しくなったビルトロックスの85mmAFレンズを試す

  

日本国内の正規代理店は常盤写真用品株式会社に

 

VILTROX(ビルトロックス)をご存じでしょうか。2007年に中国・深圳(シンセン)でカメラアクセサリーの製造を開始したJueyingテクノロジー株式会社が手がける、中国新興系レンズブランドです。

日本国内でもコストパフォーマンスの高いソニーやフジフイルム向けなどのレンズが販売されており、AFレンズが特に注目されています。

このビルトロックスの日本国内正規代理店が2020年5月下旬に、名古屋市の常盤写真用品株式会社に決まり、サポートなども同社が行っていくということです。

今回紹介するVILTROX 85mm F1.8 II FEは、ビルトロックスレンズの日本国内正規代理店が常盤写真用品株式会社に決定して発売される第一弾の製品になります。

具体的にVILTROX 85mm F1.8 II FEをみていくと、35mm判フルサイズに対応するソニーEマウント用でAFを搭載する85mmのレンズです。開放F値は1.8と大きなぼけが得やすい、ポートレート向けのレンズになっています。実勢価格は52,000円前後と85mmのAFレンズとしてはエントリークラスといえる価格設定です。

レンズ構成は7群10枚で、非球面レンズ1枚、特殊低分散レンズ1枚を含みます。大きさは最大径が約80mm、長さが約92mm、質量は約484gと大きさの割に軽く感じるレンズです。

AFの駆動にはSTM(ステッピングモーター)を採用しており、静粛性と高速性を両立しているといいます。また、カメラボディの顔/瞳AFやボディ内手ぶれ補正機構にも対応済です。レンズ制御プログラムをファームアップするためのUSB端子も用意されています。

レンズ鏡筒部分などは、金属パーツが基本でシンプルなデザインながらシャープな印象といえるでしょう。

まさにカメラメーカー純正並みの充実したスペックといえるVILTROX 85mm F1.8 II FEを入手し、筆者がAmazon Kindle電子書籍『VILTROX 85mm F1.8 II FE レンズデータベース』を制作する際に撮影した解像力やぼけディスクなどの各種実写チャートや人物などの作例を元に本レンズの実力を詳細に解説していきます。

  

 

 

解像力チャート

 

画面周辺部まで、しっかりと高い解像力を発揮

  

VILTROX 85mm F1.8 II FEの解像力は、最新の35mm判フルサイズ対応ミラーレス一眼用レンズと同傾向の絞り開放から画面周辺部分までしっかりと高いものになっています。素晴らしい結果でした。

中央部分については、絞り開放のF1.8から、非常にシャープで、解像力のピークはF8.0前後と推察されます。

周辺部分についても同傾向で開放のF1.8からシャープです。ただし、F2.8あたりまでは周辺光量落ちの影響でコントラストが下がる傾向があります。解像力のピークは同じくF8.0前後です。

F16まで絞ると、絞り過ぎによる解像力低下が発生するので注意が必要でしょう。

解像力自体は非常に素晴らしいのですが、糸巻き型の歪曲がやや強めに発生します。また、色収差が発生しているのも気になるところです。

  

 

※解像力チャートについて

解像力のチェックには小山壯二氏のオリジナルチャートを使用し、各絞り値で撮影しています。

 




絞り開放のF1.8から周辺部までしっかりと解像しているのがわかります。絞ると周辺部分のコントラストが改善して、さらにシャープです。

 

 

 

周辺光量落ちチャート

 

開放付近で視線誘導効果が得られる程度の発生量

 

VILTROX 85mm F1.8 II FEの周辺光量落ちは、絞り開放付近で若干量発生し、絞ると消えるレベルです。

具体的にみていくと絞り開放のF1.8で画面の四隅が暗く落ち込んでいるのがわかり、F2.0まで絞ると減少がはじまり、F2.8ではほぼ気にならないレベルに、F4.0以降では気にする必要すらないでしょう。

どうしても気になるならRAW現像時のデジタル補正などで簡単に消せるレベルです。ただし、周辺光量落ちが起きると、中央に配置したメイン被写体が周辺部よりも明るく見え、写真を見る人の視線を主役に誘導する視線誘導効果が得られます。

ポートレートレンズとも呼ばれる85mmでは絞り開放付近での多少の周辺光量落ちがプラスの効果が得られることも多いはずです。

  

 

※周辺光量落ちチャートについて

周辺光量落ちチャートは半透明のアクリル板を均一にライティングし、各絞り値で撮影しています。

 

絞り開放付近で発生する画面の四隅が若干暗くなるような周辺光量落ちです。F2.0でも開放のF1.8よりも改善します。

 

 


ぼけディスクチャート

 

かなり高レベルだが、色付きが気になる

  

VILTROX 85mm F1.8 II FEは非球面レンズを採用しているにも関わらず、ぼけディスク内に同心円状シワが発生する、いわゆる玉ねぎぼけの影響は観察されません。また、9枚の絞り羽根も絞り開放のF1.8では真円に近い美しい形のぼけを作り出してくれます。

しかし、それでも本レンズのぼけが最高峰クラスの高級レンズに及ばない理由はふたつです。

ひとつめは、絞り開放では真円に近い美しい形のぼけが得られるのですが、F2.2あたりまで絞ると、絞り羽根のカクツキが目立ってくる点が気になります。

ふたつめは、色収差が原因と思われるぼけディスクのフチへの色付きです。玉ぼけが発生するシーンでは気になることがあるでしょう。

逆にいえば、このふたつを除けば、最高峰レベルのなめらかで美しいぼけが得られる結果となっています。

  

 

※ぼけディスクチャートについて

画面内に点光源を配置し、玉ぼけを撮影したものです。この玉ぼけ=ぼけディスクを観察し、形やなめらかさ、ザワつきなどを確認しています。




気になるポイントは、ぼけディスクに発生する色付きと、わずかに絞るだけで目立つ絞り羽根の形です。それ以外は最上級のぼけといえます。

 

 

 

最短撮影距離と最大撮影倍率チャート

 

85mmの単焦点レンズとして極めて平凡な結果

 

VILTROX 85mm F1.8 II FEの最短撮影距離は80cm、最大撮影倍率は0.125倍(1:8)です。この数値は、一眼レフ時代からお約束ともいえる85mm単焦点レンズの非常に平均的なスペックといえます。極めて平凡です。

85mmの単焦点レンズとしては、非常に平凡なスペックですが、撮影していると必ずもう少し寄れるとよいのにと感じる最短撮影距離といえます。最新設計のレンズなので、この点は少し残念です。

  

 

※最短撮影距離と最大撮影倍率チャートについて

小山壯二氏のオリジナルチャートを使っています。切手やペン、コーヒーカップなど大きさのわかりやすいものを配置した静物写真を実物大になるようにプリント。これを最短撮影距離で複写し、結果を観察しています。

(ここから先のチャート詳細は、電子書籍でお楽しみください。)

  

 

 

実写作例

 

被写体によっては少しシャープすぎるほどの描写

  



VILTROX 85mm F1.8 II FE/Sony α7R III/85mm/絞り優先AE(F1.8、1/100秒)/ISO 1250/露出補正:+1.7EV/WB:オート 身長約50cmの新生児です。ピントはアクビをするクチ、顔も当然小さいので瞳とクチの距離の差はほとんどありませんが瞳がぼけています。被写界深度はとても浅いです。

 

 


VILTROX 85mm F1.8 II FE/Sony α7R III/85mm/絞り優先AE(F1.8、1/500秒)/ISO 100/露出補正:+1.0EV/WB:オート 素焼きの雪だるま? を撮影しました。新生児ではややシャープ過ぎるほどに感じたピントの合った部分の解像感、大きなピンクの前ぼけ、グリーンの背景ぼけが印象的です。

  

 

 

総評

 

あえて選択する価値のある解像力の高いポートレートレンズ

 

すでにご存じの方も、レンズ名称から気付かれた方もいるかもしれませんが、VILTROX 85mm F1.8 II FEはいわゆるII型です。II型があるということは、当然I型があるのですが、それがVILTROX PFU RBMH 85mm F1.8 STMになります。

実は、この初代となるVILTROX PFU RBMH 85mm F1.8 STMも筆者は各種チャートを撮影し分析を行った結果、周辺解像力が一眼レフ時代に設計された85mm単焦点並みという評価をしています。ただし、VILTROX 85mm F1.8 II FEよりも、さらに安価な価格設定など、コストパフォーマンスの高い、エントリーに最適なAFポートレートレンズと考え、高く評価しており、この点はいまも変わりません。

ただ、VILTROX 85mm F1.8 II FEは、VILTROX PFU RBMH 85mm F1.8 STMの弱点をしっかりと改善し、絞り開放から画面全体の解像力が高い、最新のミラーレス一眼用レンズらしい描写傾向を示しました。絞り開放から本当にシャープで、赤ちゃんを撮影したときなどは、ややシャープすぎるのではと思ったほどです。非常に優秀な結果といえます。

ただし、気になる点がまったくない訳ではありません。糸巻き型に発生する歪曲と色収差が気になります。

糸巻き型の歪曲は、RAW現像などの後処理で比較的簡単に補正できるので、必要なシーンではRAW画像を撮影しておくとよいでしょう。

色収差については、玉ぼけのフチなどに発生すると気になることがあるかもしれません。これは補正がかなり難しいと思われます。

細かく探せば気になる点は多少ありますが、エントリークラスの実勢価格で85mm単焦点レンズの最高峰クラスと同傾向の画面全体での高い解像力、美しいぼけ、しかもストレスを感じない高速なAFと非常に優秀なレンズです。

初代のVILTROX PFU RBMH 85mm F1.8 STMがエントリーユーザーなどにコストパフォーマンスの高さを重視しておすすめするモデルだったのに対して、VILTROX 85mm F1.8 II FEは、その性能からあえておすすめしたいモデルに進化したといえます。

85mmのAF単焦点レンズを検討するなら、必ず候補に入れておきたいレンズといえる出来です。

  

 

【Text&Photograph:齋藤千歳】 

https://pasha.style/article/999

 

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