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NAVIGATOR’S Shooting
星野耕作 × XF50mmF1.0 R WR
9月24日に発売されたばかりの『フジノンレンズ XF50mmF1.0 R WR』をファッションやビューティ系を得意としている
PASHA
STYLEポートレートナビゲーター星野耕作さんがレビューします。
今回の作品撮りはモデル・女優などで活躍されているAnnAさんが、自身のHPに載せられる写真が欲しいということで結成されたチームAnnA。ヘアメイクの田中惟子さんとジュエリーデザイナーの木村翠さんは、AnnAさんのインスタグラムでの作品撮り募集をみて参加。そこにフォトグラファーの星野さんが加わるかたちでチームが結成されたそうです。
それではミラーレスデジタルカメラ用交換レンズとして、世界初となるオートフォーカス機能を搭載し、開放F1.0を実現した大口径中望遠単焦点レンズ『フジノンレンズ XF50mmF1.0 R WR』をレビューします。
【テスト機材】
カメラ:FUJIFILM X-T4
作例1 シャッター速度1/200 絞りF2 ISO320 |
作例2 シャッター速度1/320 絞りF1 ISO200 |
自然光でファッションポートレート
開放F1.0のボケ感を楽しむために、自然光が入る窓際でモデルのAnnAさんに窓の横でポージングしてもらって撮影。ライティングは高さ180㎝ぐらいの白カポックをモデルさんの横に立てて、さらに顔明るくするために小さいカポックも使って柔らかい光を作っていました(写真①)。作例1では背景が暗く落ちてしまうので、補助的にストロボを入れて背景と被写体との露出差を減らし撮影(写真②)。
今回の作品撮りではジュエリーデザイナー(木村翠さん)が参加しているので、お花やアクセサリーを追加しながら様々なバリエーションのカットを撮影しました(写真③④)。作例2は窓際に机を置いて、そこに腰かけて撮影(写真⑤⑥)。
【星野’s VOICE】
「X-T4とXF50mmF1.0 R WRのファーストインプレッションは、ストレスなく撮れる感じが良かったです。AFはシングルモードで瞳AFをオンで撮影しました。F1.0と言うとピントがシビアでAFが効かないピーキーなイメージだったのですが、すごい使いやすかったです。写りもなだらかにボケる感じでよかったです。開放F1.0のオートフォーカスレンズだから、車に例えるとスーパーカーのフェラーリに乗るイメージを想像していましたが、使ってみたら大衆車に乗るような感じで、使いやすいレンズでした。目にピンがシャープにくるけど、全体的には柔らかい描写が凄くいですね。カリカリしすぎない感じがいい。作例2ではAnnAさんにカスミ草を持ってもらって撮影したのですが、エレガントな雰囲気になりました」
作例3 シャッター速度1/500 絞りF1 ISO200 | 作例4 シャッター速度1/320 絞りF1 ISO200 |
作例5 シャッター速度1/250 絞りF1 ISO250 |
ストロボでファッション撮影
作例6 シャッター速度1/200 絞りF8 ISO160 |
今回はF1.0のレンズテストという事で、通常はF値を絞って撮影するスタジオワークを開放でチャレンジ。まず環境光の影響を受けないように窓をしっかりと塞ぎました(写真⑦)。グレーの背景紙を使って、ストロボはオクタゴンを使った1灯ライティング(写真⑧⑨)。シャドーを弱くするために、自然光で使ったカポックをモデルさんの横に設置。ブラックボックスが完成すると、スタジオが真っ暗なので撮影はモデリングランプをつけて行いました(写真⑩)。F1.0で撮影となると普段の撮影だと影響を受けないちょっとした光にも気をつけないといけない状況。写真⑪の右奥の光の影響もでたのでカーテンを閉めて対応しました。写真⑫が最終的にできあがったセッティング。
【星野’s VOICE】
「ライティングは1灯でシンプルにして、影をどう出していくかを意識して光を作りました。今回は開放F1.0がポイントなので、ストロボ撮影でもF1.0を使ってみました。撮影時はEVFの設定を“露出を反映しない”にセットして、モデリングをつけて撮影しました。作例7は絞りF1.0。ストロボ(プロフォトB10プラス)の光量は1.3とかなり少ない光量で済みました。描写の比較用(作例8)では、絞りF8でも撮影しました。この時は光量が6.3です。
普段は絞って撮影するのでF1.0で撮影することはまずありえないのですね。テスト撮影なのでF1.0で撮影して、今までにないボケ感で面白かったです。ジュエリーの撮影などで指輪だけ見せたい時とかに開放F1.0で撮影するのはありかもしれないですね」
作例7 シャッター速度1/200 絞りF1 ISO160 |
作例8 シャッター速度1/200 絞りF8 ISO160 |
イメージ撮影
作例9 シャッター速度1/80 絞りF1 ISO500 |
ジュエリーデザイナーの木村さんの提案で撮影したのが作例9と10。木村さんが制作したパールのアクセサリー(写真⑰)のイメージに合わせて、青い衣装とガーランド(豆電球)を用意して、深海のイメージに仕上げました。作例10はテーブルにガーランドを設置して撮影(写真⑬⑭)。ガーランドの明かりだけだと顔が落ちすぎてしまうので、ストロボのモデリングランプ(LED)を加えて撮影。作例9はより深海感を出すためにキラキラのシート(写真⑮)を敷いて、その上にAnnAさんが横になってもらって撮影しました。こちらもガーランドの自明かりにストロボのLEDモデリングを加えてセッティング。
【星野’s VOICE】
「豆電球(ガーランド)を使った作品のライティングは、ストロボのLEDモデリングランプと豆電球をバランスよく見せることを意識してライティングしました。こうしたシチュエーションでは明るいレンズは撮りやすいですね。F1.0が使えるレンズだとシャッター速度も稼げるし、ISOもそれほど上げないで済む。絞ってもいいし、絞らなくてもいい。とにかく選択肢が増えるのは嬉しいですね。
最後に50mm(35mm判換算 76mm相当)を使ってみた感想としては、普段はニコンの85mmをよく使っているので50mmはポートレートにちょうどいいと思いました。今までAPS-Cはフルサイズと比べて廉価版の印象だったのですが、富士フイルムはボディとレンズの組み合わせでフルサイズに負けない写りができてよかった。この写りなら仕事で使ってもいいかもしれないです。あと今日はスタンダード(プロビア)しか使っていなかったのですが素直な肌色が出る感じが良かったです。あ、ひとつ難点があるとしたらISOが160からのところ。100※から使えるようにして欲しいかも……」
※編集部注 拡張モードでISO80、100、25600、51200も設定可能
作例10 シャッター速度1/80 絞りF1 ISO500 |
【プロフィール】
星野耕作(Twitter、instagram、facebook、HP)
フリーランスフォトグラファー
公益社団法人日本広告写真家協会正会員。日本大学生産工学部機械工学科卒。
元メーカー子会社勤務、デジタルカメラの開発に携わる。現在ポートレイトを中心にスチールやムービーを撮影。雑誌、CDジャケット、カタログ、WEB等で活躍中。
【STAFF】
model:AnnA(SATORU JAPAN) (instagram、YouTube)
hair&make up:田中惟子(instagram)
Jewelry designer:木村翠(instagram)
XF50mmF1.0 R WR
【仕様】
焦点距離:50mm(35mm換算76mm相当)
最小絞り:F16
レンズ構成:9群12枚
絞り羽根:9枚
最短撮影距離:0.70m
サイズ:87×103.5mm
質量:845g
マウント:Xマウント
価格:20万円(税別)
発売日:2020年9月24日
開放F1.0で表現される美しいボケ感の世界。今までなら美しい描写だけどマニュアルフォーカスだからピントを合わせるのが難しかった。そんなF1.0の世界を手軽に楽しめるようにしてくれたのが、今回レビューしたオートフォーカス機能を搭載した『XF50mmF1.0 R WR』。Xマウント使いなら欲しくなるレンズですね。
text:SATO TAKESHI