• 記事検索

  • [ 連載:マニアックレンズ道場8] SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
    寄れて小さく軽くてコストパフォーマンスも高い


 

 

SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary 実写チャート性能評価

 

 

シグマIシリーズ最広角の24mmのスペックの確認

 

ちょっと暗いが恐ろしく近接撮影に強い1本

 

SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryは、シグマのIシリーズのなかでももっとも広角となる1本です(2021年3月頭現在)。光学性能を追求しながらもコンパクトで使いやすいことを考慮した、Contemporaryライン。これに所有する喜びや質感を高い工作精度で実現したのがIシリーズです。まずは、SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryの基本スペックから見ていきましょう。

開放F値3.5と暗めの設定の35mm判フルサイズ対応の24mm。しかし、最短撮影距離は約10.8cm、最大撮影倍率は0.5倍とハーフマクロを実現。マクロ並みに近接に強いどころか、マクロレンズといってもよい性能となっています。また、レンズサイズも非常にコンパクト。最大径64mm、長さは50.8mm、質量は約230g(数値はソニー Eマウント用のもの)です。

レンズ構成は8群10枚で非球面レンズが3枚に、特殊低分散レンズが1枚使用されています。絞り羽根の枚数は7枚で円形絞りを採用。非球面レンズや絞り羽根枚数がぼけのどのような影響を与えるか、興味のあるところです。

コンパクトな24mm広角レンズでありながら、マクロレンズ同等の近接撮影から、高い解像力で広い風景の撮影までをこなすというSIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary。この光学性能を、筆者たちが制作する電子書籍「SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary レンズデータベース」(https://www.amazon.co.jp/dp/B08ZW642PD/)に掲載した解像力やぼけディスクなどの実写チャートの結果を元に解説していきます。

 

 

解像力チャート

 

開放からシャープな中央部、ちょっと絞ればしっかり解像する周辺部

 

解像力のチェックには、小山壮二氏のオリジナルのA1サイズの解像力チャートを使用しています。今回のテストでは有効画素数4,240万画素のSony α7R IIIにSIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryを装着して、テストを行ったので基準となるチャートは0.8です。また、筆者たちは、現在のレンズはカメラとの組み合わせで性能を発揮すると考えているので、カメラのレンズ補正などのデジタル補正は初期設定のままとしています。

実際にチャートを撮影した結果からみていくと、予想どおりというか、絞り開放から周辺部までバキバキに解像するタイプのレンズではありません。絞り開放のF3.5では周辺部のチャートの線は解像しているものの、中央部に比べるとコントラストが弱く、少しあまい印象です。ただし、わずかに絞ったF5.6付近では中央部と変わらない解像力を発揮するので、問題を感じることはほとんどないでしょう。

絞りすぎによる解像力低下、回折や小絞りぼけはF13あたりから発生します。必要のないシーンでは絞りすぎないことをおすすめします。

「レンズ補正」「オート」の初期設定では、歪曲や色収差などもほとんど発生しません。

全体に優秀な結果です。

 

 

解像力チャートについて

 

解像力のチェックには小山壯二氏のオリジナルチャートを使用し、各絞り値で撮影しています。

 

 


絞り開放から中央部ははっきりと解像。周辺部については、開放ではややあまくみえますが、ちょっと絞るときっちりと解像します。

 

 

周辺光量落ちチャート

 

絞るほどに徐々に改善する周辺光量落ち

 

「周辺光量補正」は「オート」となっていますが、SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryの開放F3.5では周辺光量落ちの影響がみられます。24mmの広角なのでゼロというわけにもいかないのでしょう。基本的に絞ると徐々に改善する傾向で、F11あたりまで絞るとほぼ影響がなくなります。

しかし、さほど極端な周辺光量落ちでないうえに、絞っても改善は本当に徐々になので、周辺光量落ちの気になるシーンでは絞るよりも、RAW画像も撮影しておき、後処理で対処することをおすすめします。

F5.6やF8.0あたりまで絞るとさほど気になることもないと筆者は感じます。

 

 

周辺光量落ちチャートについて

 

周辺光量落ちチャートは半透明のアクリル板を均一にライティングし、各絞り値で撮影しています。

 


絞れば徐々に周辺光量落ちの影響は少なくなります。しかし、開放付近で撮影し、気になる場合は後処理での対処がおすすめです。

 

 

ぼけディスクチャート

 

輪線ぼけもなく予想以上のぼけクオリティ

 

SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryは、前玉の1枚目を含め非球面レンズを3枚も採用しているので、ぼけの円(玉ぼけ)のなかに同心円状のシワ、輪線ぼけ(タマネギぼけ)が発生することが懸念されました。しかし、シグマのIシリーズなどに採用されている±5ナノメートルという精度で管理されているという高精度なグラスモールド非球面レンズの金型のためか、輪線ぼけの影響は感じられません。

ぼけの質という点では、ぼけの円のフチに若干の色付きがみられる以外はトップクラスの美しさをいえるでしょう。

ぼけの形についても、SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary、SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporaryの9枚羽根の円形絞りに対して7枚羽根の円形絞りなのでどうなのかと思いました。しかし、結果は上々です。開放付近はもちろん、多少絞っても、絞り羽根によるカクツキもなく、美しい形のぼけが得られます。

24mmの広角で開放がF3.5と暗いですが、近接撮影に強いレンズなので、ぼけが発生するシーンも多くなることが予想されるのです。ぼけが美しいのは大きなメリットといえるでしょう。

 

 

ぼけディスクチャートについて

 

画面内に点光源を配置し、玉ぼけを撮影したものです。この玉ぼけ=ぼけディスクを観察し、形やなめらかさ、ザワつきなどを確認しています。

 


広角の24mmとは思えない美しいぼけが得られます。ぼけの発生しやすい近接撮影でも美しいぼけは大きなメリットです。

 

 

最短撮影距離と最大撮影倍率チャート

 

マクロレンズ並みを越える近接撮影性能

 

広角の24mmですが、最短撮影距離はなんと10.8cm。この際の最大撮影倍率は0.5倍となります。

最大撮影倍率が0.5倍ということは、いわゆるハーフマクロでの撮影が可能です。よくいうマクロレンズ並みではなく、マクロレンズという名称やカテゴリーでもおかしくない性能といえます。

レンズフードの先が被写体のくっつくのではないかというレベルで被写体に寄って撮影できるのは、とても便利。広角単焦点というだけでなく、広角マクロという特徴もあるレンズになっているので、撮影の幅が本当に広がります。

ハーフマクロの能力はぜひ活用したいところです。 

 

 

最短撮影距離と最大撮影倍率チャートについて

 

小山壯二氏のオリジナルチャートを使っています。切手やペン、コーヒーカップなど大きさのわかりやすいものを配置した静物写真を実物大になるようにプリント。これを最短撮影距離で複写し、結果を観察しています。

 


驚くほど寄れる24mmの広角レンズ。マクロ並みではなく、24mmハーフマクロと呼びたいほど。撮影の幅が広がります。

 

 

実写と使用感

 

「寄れる」から、なんでも撮れる

 


SIGMA 24mm F3.5 DG DN | ContemporarySony α7R III24mm/シャッター速度優先AEF3.51/80秒)/ISO 640/露出補正:+1.0EVWB:オート

 

SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryの実写テストは、6カ月になるうちの息子とキャンピングカーで北海道一周の旅に出ているときに行いました。そのため、朝からせわしなく動きながら、旅の様子を撮影していたのですが、これのレンズだとズームレンズのように、なんでも撮れるのです。

掲載した写真は、スーパーで購入したお惣菜とご飯で済ませた昼ごはんの様子。24mmの広角だと旅先の様子を撮影するには便利ですが、こういったご飯のような撮影は苦手ということが多いでしょう。しかし、ハーフマクロを実現する本レンズの場合、当然広角の特性を残したままですが、しっかりとマクロ的な撮影も可能です。また、クロップして36mm相当で使うのも、おすすめ。

「寄れる」ことで撮影の幅が非常に広がります。

 

 

軽くて小さいってすばらしい

 


SIGMA 24mm F3.5 DG DN | ContemporarySony α7R III24mm/シャッター速度優先AEF4.01/80秒)/ISO 100/露出補正:+0.7EVWB:オート

 

最大径64mm、長さは50.8mm、質量は約230gとコンパクトで軽量なレンズ。しかも、広角で寄れるので、さまざまな状況に対応できます。おかげで単焦点ながら、常用ズームのように、いつもカメラにつけておいても問題を感じません。

写真は、旅先で家族風呂に入る息子を脱衣場で撮影した1枚。レンズがコンパクトなので、邪魔にならず、さまざまな場所に連れて行けるのも大きなメリットになっています。

 

 

当たり前だが風景写真も作品レベル

 


SIGMA 24mm F3.5 DG DN | ContemporarySony α7R III24mm/絞り優先AEF8.01/200秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EVWB:オート

 

SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryは軽くて、小さくて寄れるだけでなく、解像力もとても高いです。レンズのサイズなどを考えると絞り開放から周辺部までバキバキとはなりません。しかし、ちょっと絞れば、周辺部まできっちり解像します。

掲載写真のようにF8.0まで、絞れば周辺部まで中央部と同等レベルで解像しますから、広い風景の撮影も作品レベルで楽しめます。

 

 

総評

 

ユーザーのわがままに応えるシグマIシリーズの1本

 

高性能なレンズは光学的にどうしても「大きくて」「重くて」「高く」なるのです。これは仕方のないことだから、高性能なレンズを使いたいなら「大きくて」「重くて」「高い」のは我慢しなくてはいけないと、筆者も無意識のうちに思っていました。それどころか、ある程度の大きさがないと光学的な性能はでないとも思い込んでいたのです。ある意味正しいのですが……。

しかし、SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryを含むシグマのIシリーズは、そんな常識を新しくしようとしているように感じられます。

例えば、同じシグマには光学性能を最優先したArtラインがあり、超高性能で大ぶりなレンズが多数ラインアップされています。しかし、それらと比べても、SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryは、解像力では絞り開放付近で周辺部に解像力がややあまい、ぼけ描写はぼけの円のフチにわずかに色が付くといった点を除くと、かなり肉薄したところまできています。

実際、解像力はF5.6あたりまで絞れば、周辺部も中央部並みの解像力を発揮します。また、ぼけもさすがにフチの色付きはなくなりませんが、内部のなめらかさなどはトップクラスのレンズに並びます。

これは、超高精度なグラスモールド非球面レンズの金型のようなハードウェアの技術力にプラスして、カメラ本体のデジタル補正を積極的に活用した結果でしょう。

実はSIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryも歪曲収差の補正をカメラ本体側で行わないと、大きく糸巻き型の歪曲収差が発生するという特性があります。もともと歪曲収差などはデジタルでの補正に任せて、光学性能をほかの部分に使った方がレンズは高性能化するといわれてきました。本レンズは、それに素直に従ったといえるでしょう。

35mm判フルサイズのミラーレス一眼の普及率が上がるにつれて、一眼レフ時代よりも積極的にカメラ本体のデジタル補正との相乗効果でより高性能で使いやすいレンズが増えているように感じます。

SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryは、「小さくて」「軽くて」「安くて」、もっと便利で写真を楽しめるレンズがほしいというユーザーの素直なニーズ、わがまま? に応えたレンズといえるでしょう。

実勢価格の60,000円前後は安いまでいかなくても十分に現実的なお値段。そのうえ「小さくて」「軽くて」「高性能」、しかも「寄れる」SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporaryは常用の広角として、さまざまなシーンを撮影したいレンズに仕上がっています。シグマのIシリーズのなかでも特におすすめです。

(写真・文章:齋藤千歳 技術監修:小山壮二)

 

 

【Text&Photograph:齋藤千歳】 

https://pasha.style/article/999

 

マニアックレンズ道場シリーズ