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瀬尾浩司さんへ直撃インタビュー
新作『BEYOND』に込めた熱い想い
4月2日からファッションブランド「TAKEO KIKUCHI」のTAKEO KIKUCHI渋谷明治通り本店3Fで、PASHA STYLEポートレートナビゲーター瀬尾浩司さんの写真展『BEYOND-PHOTO by.HIROSHI SEO』がスタート。
先日行われたPASHA STYLEのYouTubeチャンネル『PASHA STYLE TV』にもゲスト出演して頂いたので、早速、写真展の初日にお邪魔しました。
瀬尾浩司写真展『BEYOND-PHOTO by. HIROSHI SEO』
会場:TAKEO KIKUCHI渋谷明治通り本店 3F
場所:東京都渋谷区神宮前6-25-10-3F
期間:4月2日(金)~5月5日(水)※緊急事態宣言発令に伴い25日で終了となりました。
11:00~20:00
入場:無料
会期を予定していた5月5日までWeb版POP UP GALLERYを公開中。
【写真家プロフィール】
瀬尾 浩司
広島県福山市出身。京都精華大学デザイン科卒業後、日本を代表する写真家・植田正治に師事。
2000年よりフリーの写真家として広告・ファッション・雑誌など様々な分野で活躍中。
それでは瀬尾浩司さんのインタビューをご覧ください
新作『BEYOND』を撮ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
去年、緊急事態宣言が出て、カメラマンになって初めて2カ月仕事がなくなったんですよ。本当なら海外ロケとか国内ロケでいっぱい埋まっていたんですけど、全部キャンセルになって。
どうしよう、この期間に何をしようか? と考えた時に、新しいことに挑戦できないかと考えました。ひとつはYouTube。
それが今の「写真大学University of Photography」なんです。
内容的には僕が知り合いの写真家や写真にまつわるいろいろな仕事をされている方に出ていただいて、どうやって写真家になれたのか?
なんて話を聞くことで、休校になっている写真学校の学生や、写真好きだけど外に出られない人達の学びに少しでもなればと思って始めました。
アクリル作品の台として廃材を再利用するなど、細部にまでこだわった展示。さらに、『BEYOND』の会場で流れている音楽は、DJのAYANA KAJIHARAさん(Instagram)に作品のインスピレーションから作っていただいたオリジナル楽曲!
もうひとつが自分の作品創りをしていくことでした。
ある日、散歩していて『BEYOND』の原型となる風景に出会ったんですよ。これスゴイじゃんと思って、次の日に行ったらもうない。
時間とか光とか場所とか全ての条件が偶然重なる、その一瞬にしか現れないものに出会ったんですよ。そこから作品撮りをはじめました。
緊急事態宣言で県外に出れなかったので、『BEYOND』は全て都内で撮影しています。作品は全て加工なしの一発撮りです。
今までトライしてこなかった抽象的な作品『BEYOND』はアクリルの仕上げにピッタリ。
『BEYOND』は写真ぽくないのですが……
僕は植田正治っていう写真家のアシスタントをしていたぐらいなので、銀塩写真にこだわっています。家には暗室もあるし……。
撮影で生計を立てている僕は、デジタルでポートレート、ファッションなど、いろいろな撮影をしてきました。
緊急事態宣言で、当たり前だったことが当たり前じゃなくなったり、当たり前じゃなかったことが当たり前になったり、本当になんか色んなことが変わってしまった。ならば写真も自分の中で変えて作っていこうと考えました。今まで抽象的なものを撮ってこなかったので、抽象的なものを撮ろう。表現(仕上げ)も銀塩ではなくて違う表現方法を使てみようと思いました。
今回の展示ではアクリルにプリントしたりだとか、そういうことも写真の表現としてやってもいいのではないかと考え方をリセットしました。
結果的に今回の展示を見ると新しいチャレンジばかりになっています。
レストランの跡地を自分たちで改装して展示スペースとして使用、『BEYOND』から併設展『イメージの再生(A REBIRTH of IMAGES)』が見えるところがニクイ演出。
『BEYOND』は今後も続けて行くプロジェクトなのでしょうか?
今回は波の『BEYOND』を撮っているのですけど、今後は波以外のものも撮っていこうと思っています。実はもう撮り始めています!!
併設展『イメージの再生(A REBIRTH of IMAGES)』について教えてください
TAKEO KIKUCHIの創始者である菊池武夫がクリエイティブディレクターをつとめるデザイナーズブランド「40CARAT&525」の広告撮影をしているのですが、僕が去年とか一昨年の写真よかったなぁと思っても、今年はもう新しい服を撮影して販売しなければいけないので、過去にリリースされた写真は、もう世の中には出ないですよね。
最近サステナブルという言葉を耳にするので、写真もそのサステナブルな考え方で、再生出来ないのかな? と考えて、昔の写真にペイントやグラフィックを足す事で2021の新作として再生させて発表できるんじゃないかと思い、「A REBIRTH of IMAGES」というテーマをつけて展示しました。
写真をでろ~んとさせたかったのでビニールにプリントした作品。
グラフィックスも瀬尾さんが手がけたのですか?
グラフィックスはアートディレクターの松崎理さんにお願いしました。基本的には写真のセレクトから色選びなど松崎さんと一緒に決めていきました。
ニューヨークのソーホー地区みたいな感じにしたいと仕上げられた空間はとってもクール。
インスタグラムで瀬尾さんがペンキを塗って仕上げているのを見たのですが……
作品を展示しているPOP UP GALLERYは元々レストランで、展示室Bは厨房があった場所でした。下地が悪かったので、廃材のスノコを使用し安全に歩けるように工夫をしています。壁も油でギトギトだったので、綺麗に洗ってペンキを塗って、展示空間の代名詞のホワイト・キューブになるようにしました。
予算がないので自分でも作業しましたが、エクスプローラーズトーキョーの春名さんに相談して結成されたRE:projectのメンバーと協力して空間を作っています。
ひとりだととてもできない。写真家の仕事じゃない(笑)
会場に展示スペースを仕上げてくれたRE:projectのメンバー記念撮影。残念ながら春名さんは不在。
【RE:project】
株式会社エクスプローラーズトーキョー 春名克紀/森 祐太
株式会社リフレクション 佐藤陽彦/森泉光裕
株式会社エイシン 市川 恭
アストロジカ合同会社 江上聖和
(敬称略)
展示作品が全て購入できると聞いたのですが
緊急事態宣言があって、みんな作品を家に飾りたいという声を頂いていたのですが、
「瀬尾さんの作品って高いんでしょ?」と言われていたので、何とか安くできないかと思って価格設定をしています。
海外では一般の人たちが気軽にアートを買って部屋に飾る文化ができているから、写真が売れるマーケットが成り立ってるんですが、日本でも写真を買う環境を作りたいですね。洋服を買ったり、音楽をダウンロードするような感覚で写真を買ってくれる文化が生まれれば、写真を撮るみんなに可能性が出てくると思うんですよね。
だから今回は安くしています。リソグラフは版画のようなプリント方式なのですが、これなら1点1万1000円で販売できると思ってトライしました。
会場のみの販売で15部限定のナンバリングありでサイン付きです。
リソグラフの作品は壁に展示されているもの以外に、見本も置いてありました。額装したい方には別料金でアルボリック仕上げのフレーム(3万3000円)とノーマルフレーム(1万4300円)を注文可能とのこと。
ちょっと安すぎる印象があるのですが
写真を買う文化を根付かせたいし、最初に作品を買ってくれた方の作品が、価値が上がっていくのはいいじゃないですか?
アクリルの作品は今後海外のマーケットにも出して行く予定なので、今回の展示が終わったら価格も見直して、数も絞っていくつもりです。
今回は裏テーマで「自宅にアートを」という思いもあって、昨年からみんな自宅で過ごす時間が長いからアート作品でも自宅にあると、少し気分転換になったりするんじゃないかな? そんな気持ちからこの価格の設定にしました。
以上でインタビュー終了です
アクリル作品は光のあたり方や見る角度で写真作品とは思えない雰囲気があるので、ぜひ会場で見て欲しい。
展示に行ったらココも注目!!
瀬尾さんの写真展『BEYOND-PHOTO by. HIROSHI SEO』は、作品はもちろんのこと展示スペースなど細部にこだわった展示で見どころ満載です。
なんと『イメージの再生(A REBIRTH of IMAGES)』の元となった写真が掲載されていたタブロイド判のスタイルブック「FORTY CT PRESS」のバックナンバーが会場外の階段壁面にディスプレイしてあります。
展示の前後に眺めてもらうとより一層今回の展示が楽しめると思います。
text:SATO TAKESHI