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  • [連載:マニアックレンズ道場11] TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD
    25mm-105mm相当のF2.8通しの明るい標準ズーム

  

 

[連載:マニアックレンズ道場]

25mm-105mm相当のF2.8通しの明るい標準ズーム

TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD実写チャート性能評価

 

 


TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD概要

 

明るくて、しかも寄れる標準ズーム

 

TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDは、ソニー Eマウント用のAPS-C専用標準ズームレンズです。APS-C機装着時の画角は35mm判換算で約25.5mmから105mm。事実上の24-105mmF2.8といった仕様になっています。簡易防滴構造で防汚コートも採用。レンズ構成は12群16枚で、うち1枚が複合非球面、2枚がガラスモールド非球面、2枚がLD(異常低分散)レンズです。また、ぼけの形に配慮した9枚羽根の円形絞りは2段絞り込んだところまで、ぼけがほぼ円形を保つ仕様だといいます。レンズ駆動系には、独自開発のAF駆動用ステッピングモーター「RXD」を、手ぶれ補正機構にも独自のAI(人工知能)までを活用した「VC」を採用。高速で静粛、そして正確なAF、レンズの光学性を十分に引き出し、動画にも配慮した手ぶれ補正に仕上がっているそうです。

明るいF2.8通しのズームレンズでありながら、高性能なAFや手ぶれ補正を搭載するとなると気になるのは大きさと重さです。さすがに驚くほど小さいとはいいがたいサイズ。ただし、35mm判フルサイズ用のF2.8通しのズームレンズに比べると、うれしくなるくらい小さく軽い最大径約74.6mm、長さ約119.3mm、質量約525gです。十分に軽快に撮影できます。

また、注目したいのは最短撮影距離と最大撮影倍率。望遠端の70mmで約39cm、1:5.2、広角端の17mmで約19cm、1:4.8を実現、望遠端でも、広角端でも十分に寄れるレンズに仕上がっています。

重要な実勢価格は84,000円前後とかなり現実的。非常にオールマイティで使いやすいAPS-C用標準ズームレンズTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDの実力を電子書籍「TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD レンズデータベース」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0923CRC7Y/)に掲載した解像力などの各種実写チャートを元に解説していきます。

 

 

解像力チャート

 

広角端:予想以上に周辺部までシャープな優秀な広角端

 

解像力チェックには、A1サイズの小山壯二氏のオリジナルチャートを使用。Sony α7R IIIにTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDを装着しクロップモードで撮影、そのため有効画素数は約1,800万画素。そして基準となるチャートは1.2です。

開放F2.8通しのズームレンズの広角端17mmなので、中央部はもちろん、周辺部がどこまで解像するかに非常に興味を持ちました。しかし、結果は思う以上に優秀でした。

中央部は、開放のF2.8から、しっかりシャープ。解像力のピークはF8.0前後ですが、中央部に関してはF2.8と比べても若干コントラストがアップする程度。基本的に好きな絞りで撮影して問題ないと思います。

周辺部は、さすがに広角レンズのズーム端なので……と思っていましたが、開放からしっかりと解像。ただし、周辺光量落ちの影響もあってか、ややコントラストが低くみえる傾向にあります。これも絞ると改善され、F5.6あたりでワンランクアップ。F8.0前後が画面全体の解像力のピークになります。F8.0では中央部と周辺部で解像感にほぼ違いを感じません。優秀な結果です。

ただし、F13以降では中央部、周辺部ともに絞り過ぎによる解像力低下が目立ちはじめるので、明確な意図がない場合は絞り過ぎないほうがよいでしょう。

Sony α7R IIIのカメラ本体による「レンズ補正」(初期設定で「オート」)がしっかり効いているので歪曲収差や倍率色収差はほとんど観察されません。特に「歪曲収差補正」はオフにすると、強めの陣がさ型の歪曲が発生するので「オート」がおすすめです。




基準となるチャートは1.2ですが、絞り開放から周辺部まで解像しています。絞ると中央部と周辺部の差もほとんど感じません。優秀な結果です。

 

 

望遠端:開放のみ、わずかにあまいのがポートレートにいい

 

撮影条件などは広角端と同じです。広角の17mmに比べると70mmのほうが解像しそうなイメージですが、結果は逆です。TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDは広角側のほうが高解像度という印象を受けました。

絞り開放からみていくと、F2.8は周辺部もややあまいのですが、中央部も少しにじむようにあまやかです。シャープさを追求するなら問題でしょうが、開放でのポートレート撮影を考慮すると筆者的にはありといえます。ただし、F3.2まで絞るとこのにじみは消えるの、開放のみなら多少のにじみもありだと思いました。

F3.2以降は、しっかりシャープになり、解像力のピークはF8.0前後ですがコントラストが上がる程度になります。そのため、中央部の解像力に関しては開放以外あまり気にする必要を感じません。好きな絞りで撮影して問題ないでしょう。

一方の周辺部は広角端ほどシャープではない印象。ただし、絞ると解像力はアップするので、F5.6あたりで開放に比べてワンランクアップ。F8.0あたりが解像力のピークです。F8.0では周辺部も十分以上に解像します。

また、望遠端もF13以降は絞り過ぎによる解像力低下が発生します。そして、望遠端もカメラ本体の「レンズ補正」をオフにすると歪曲収差が発生するので、初期設定の「オート」がおすすめです。




望遠端の70mm側も十分以上の解像力なのですが、広角端が優秀過ぎるためか、ややあまく感じてしまいます。F8.0では十分以上にシャープです。

 

 

解像力チャートについて

 

解像力のチェックには小山壯二氏のオリジナルチャートを使用し、各絞り値で撮影しています。

 

 

周辺光量落ちチャート

 

広角端:F5.6でほぼ気にならないレベルに

 

TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDでの撮影時に、カメラ本体の初期設定によるデジタル補正は「レンズ補正」の「周辺光量補正」が「オート」となっていますが、開放F2.8で四隅に周辺光量落ちの影響がみられます。絞ると軽減しF5.6あたりでほぼ気にならなくなります。ただし、それ以上に絞っても完全に周辺光量落ちの影響がなくなるタイプではないので、必要なシーンではRAW画像も撮影して後処理での対応も検討しましょう。



絞り開放のF2.8から大きな影響というほどの周辺光量落ちが発生しません。ただし、四隅については絞っても影響が残る傾向です。

  

 

望遠端:F9.0あたりで完全に消える傾向

 

望遠端の70mmでは、開放F2.8でも広角端よりも軽微ですが周辺光量落ちが発生します。こちらも絞れば軽減する傾向でF5.6あたりまで絞るとチャートでもない限り影響が気になることのないレベルに。さらに絞ってF9.0あたりではチャートで観察していても、ほぼわからない、完全に消えたといっていいレベルになります。基本的に周辺光量落ちの影響が小さいので、あまり気にしなくてもいいかと思います。


広角端に比べても周辺光量落ちの影響は小さい。しかも、絞ると軽減するので、あまり気にしなくてもよいレベルといえるでしょう。

 

 

周辺光量落ちチャートについて

 

周辺光量落ちチャートは半透明のアクリル板を均一にライティングし、各絞り値で撮影しています。

 

 

サジタルコマフレアチェック

 

広角端:予想以上に収差の少ない結果

 

星景写真を撮影するには開放F2.8はやや暗いですが、25.5mm相当の広角端で星景写真を撮影しました。ズームレンズなので、開放の広角端、しかも周辺部を観察するサジタルコマフレアチェックではかなり不利だといえるでしょう。しかし、結果はコマ収差っぽい星の点がわずかに尾を引くような描写はみられましたが、非点収差と思われる影響はほぼありません。ちょっと驚く結果でした。掲載したF2.8からF4.0まで撮影しましたが、絞っても描写はあまり変わらないので、無理に絞る必要はないと思います。



広角端/マニュアル露出(F2.8、15秒)/ISO 4000 にて撮影。画面の右上の部分をアップしましたが、ズームの広角端としては優秀な結果でしょう。

  

 

望遠端:ほとんどの影響のない優秀な結果

 

ズームレンズの望遠端70mmF2.8、105mm相当で星空を撮影するのは、あまり一般的ではないでしょう。しかし、コマ収差や非点収差、それらが複合するサジタルコマフレアの様子を確認したく撮影を行いました。星の移動によって星が点ではなく線になっていますが、各種収差の痕跡らしきものは観察できませんでした。また、絞り開放でF2.8からF4.0まで撮影しましたが、サジタルコマフレアが発生する量などの違いは感じられない結果です。




望遠端/マニュアル露出(F2.8、15秒)/ISO 4000 にて撮影。画面の右上の部分をアップに。サジタルコマフレアの発生などは感じられません。

 

 

サジタルコマフレアチェックについて

  

星空もしくは星景写真を実際に撮影して、主にコマ収差や非点収差の発生具合を観察しています。ただし、その他の収差と複合して発生することも多く実際には複合して発生するサジタルコマフレアを観察することになります。

 

 

最短撮影距離と最大撮影倍率チャート

 

広角端:最短撮影距離19cmはとても便利

 

TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDの広角端17mmでの最短撮影距離は19cm、最大撮影倍率は0.21倍です。標準ズームの広角端としては0.2倍を越えているので、それなりに優秀といえます。ただし、本レンズの場合、APS-C用なので35mm判に換算すると0.3倍をわずかに超える範囲をアップで切りとれます。チャートの結果をみてもらうとわかりますが、かなり優秀。しかも、嫌な歪みや感などもなく、気持ちのよい描写です。



25.5mm相当の広角で被写体をかなりのアップで撮影できます。また、描写もシャープで気持ちよく撮影できるのがうれしいところ。

 

望遠端:物撮にも、ポートレートにも便利

 

広角端は驚くほどに接写に強いが、望遠端はまったくダメというレンズもありますがTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDは望遠端も優秀。最短撮影距離は39cmで、最大撮影倍率は0.19倍です。35mm判換算で約0.29倍なので、かなり近接撮影に強い105mm相当のレンズといえます。開放で中望遠のポートレートレンズと考えるととてもアップに強い。また、商品撮影(物撮)を行うにしても100mm程度の中望遠で近接撮影に強いのは非常に魅力的です。



広角端よりもわずかに最大撮影倍率で劣りますが、優秀な結果です。また、中望遠らしい、すっきりとした描写も魅力です。

 

 

最短撮影距離と最大撮影倍率チャートについて

 

小山壯二氏のオリジナルチャートを使っています。切手やペン、コーヒーカップなど大きさのわかりやすいものを配置した静物写真を実物大になるようにプリント。これを最短撮影距離で複写し、結果を観察しています。

 

 

ぼけディスクチャート

 

広角端:形は素晴らしいが、ザワつくぼけ

 

TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDは、2枚のガラスモールド非球面レンズ、1枚の複合非球面レンズを採用しているためか、ぼけディスクチャートのなかに同心円状のシワ、輪線ぼけが発生しているのがよくわかります。また、ぼけのザワつきも強めといえるでしょう。ぼけ以外の結果が非常に優秀なので、これでもぼけも完璧だと優秀すぎるので、これくらいは仕方ないともいえます。ただし、9枚羽根の絞りの設計は秀逸でF4.0あたりまで絞っても、ぼけの形はほぼ真円となります。



そのほかの結果が優秀なだけで残念ですが、17mmの広角端のぼけはあまり美しいとはいえない傾向です。

 

望遠端:輪線ぼけとザワつきがやや目立つ傾向

 

最短撮影距離も短く、開放F値も明るいので大きなぼけが発生することも多いTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDの望遠端70mmのぼけディスクチャートの結果は、あまりはかばかしくありません。複数枚の非球面レンズの影響か、輪線ぼけが目立つ傾向です。また、ぼけディスクチャートのフチへの色付き、内部のザワつきなどがあり、あまりぼけの美しいレンズとはいえません。ただし、望遠端についても、9枚羽根の絞りは優秀でF5.6あたりまで、絞り羽根の影響によるぼけのカクツクはみられません。タムロンの絞り羽根設計の優秀さが感じられます。



ぼけの美しさが求められる焦点距離だけに輪線ぼけが目立つのが残念な結果。絞り羽根の設計はとても優秀です。

 

 

ぼけディスクチャートについて

 

画面内に点光源を配置し、玉ぼけを撮影したものです。この玉ぼけ=ぼけディスクを観察し、形やなめらかさ、ザワつきなどを確認しています。

 

 

実写と使用感

 

圧倒的な使いやすさが魅力



TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD/Sony α7R III/105mm相当/シャッター速度優先AE(F2.8、1/100秒)/ISO 1600/露出補正:+1.0EV/WB:オート

 

タムロン独自の手ぶれ補正機構「VC」と、カメラ本体の「瞳AF」などに対応するため、独自開発のステッピングモーター「RXD」で駆動するAFは快速、その結果、室内でも快適な撮影が楽しめます。また、最短撮影距離が望遠端、広角端ともに短いので、動きまわる子ども撮影も得意なレンズといえます。基本的に画面全体の解像力が高いレンズなので、周辺部に配置した瞳もまつげまでしっかりと解像。いいレンズです。チャートの結果はいまひとつであったぼけのザワつきも実写では、それほど気にならないといえるでしょう。レンズも比較的軽量なので取り回しも楽です。

 

 

解像力も高く、歪曲も少ない優秀な描写



TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD/Sony α7R III/25.5mm相当/絞り優先AE(F8.0、1/500秒)/ISO 100/WB:晴天

 

画面全体で高い解像力が得られるF8.0で撮影。作例は広角端ですが、望遠端も同傾向なので、基本的に画面全体で高い解像力がほしいときにはF8.0と考えるといいでしょう。建物の細かな飾り部分まで拡大してもしっかりと解像しています。気持ちがよいほどです。

また、発色もよく、コントラストもしっかりしており、背景の青空の色も素晴らしい。周辺光量落ちも感じられませんでした。

建築物を撮影すると気になる歪曲収差は、「レンズ補正」「歪曲収差補正」「オート」(初期設定)の結果では観察できません。ただし、補正をオフにすると歪曲するので注意してください。

 

 

総評

 

被写体を選ばない優秀で完成度の高い標準ズーム

 

25.5mmから105mm相当をカバーし、明るく、寄れて、解像力も高く、サジタルコマフレアなどの影響もない、なんでも撮れる優秀なズーム倍率の高い標準ズームです。気になるのは、輪線ぼけとぼけのザワつきくらいといえます。

オールマイティで優秀な標準ズームといっても、まるで特徴がないように感じる方もいるのではないでしょうか。筆者としてはより具体的にいうなら、TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDなら1本で仕事のお店取材が終了できる実力です。広角側で外観や内装を撮影し、近接撮影への強さを活かして商品や食べ物屋さんならフードなどを撮影、最後にお店の方へのインタビューで望遠端を使ってポートレート撮影。そのすべてが仕事で使えるレベルのクオリティであり、レンズ交換がないので、短時間にスムーズに撮影が可能です。非常に幸せな標準ズームといえるでしょう。

35mm判フルサイズ機ではクロップすることになりますが、多画素を必要としないシーンでは、APS-C用というアドバンテージでぼけ以外の弱点がほぼなく、かえって使いやすい標準ズームレンズといえます。

APS-C機ユーザーはもちろん、35mm判フルサイズ機のユーザーにもおすすめしたい非常に完成度の高い優秀なレンズです。

(写真・文章:齋藤千歳 技術監修:小山壮二)

 

 

【Text&Photograph:齋藤千歳】 

https://pasha.style/article/999

 

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