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NAVIGATOR‘s Shooting
Kay × NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
今回のNAVIGATOR's Shootingでは、"ストロボのマエストロ"お耽美写真家Kayさんが
ニコンZマウントの最新50mmレンズと最新ミラーレスカメラをテスト。
テスト機材、開放F値F1.2を実現した『NIKKOR Z 50mm f/1.2 s』と
有効画素数4575万画素のZマウントミラーレスカメラ『Z7Ⅱ』を使用して
ロケ、スタジオ、創作それぞれのシチュエーションでその実力を検証した。
光と影を巧みに操るKayさんは、これらの最新機材のどこに注目したのか。
【テスト機材】 |
屋外での自然光を活かしたポートレート
まずは開放F1.2の描写を活かすために、屋外でポートレート撮影をしてもらいました。モデルは舞台役者や歌手として活躍中の中村ナツ子さん。Kayさんといえば、ストロボを使ったドラマチックな画作りをする印象が強いフォトグラファーですが、仕上がりは流石の王道ポートレート。自然光とモデルと背景のバランスを考えながら、的確に撮影をしていきます。ストロボを使って光のバランスをコントロールすることに長けているだけあって、自然光でも光を読むことは完璧です。ライティング機材はシンプルに丸レフのみを使用。
作例① シャッター速度:1/320 絞りF1.2 ISO64 |
作例② シャッター速度:1/1600 絞りF1.2 ISO64 | 作例③ シャッター速度:1/1000 絞りF1.2 ISO100 |
【Kay's VOICE】
「仕事の撮影では標準ズームの24-70mmを使うことが多いですが、やっぱり写真の基本は50mmだと考えています。PASHA STYLEの写真教室でも〝50mmでモデルさんへギリギリまで近づいて撮影してみてはどうか〟という課題を出すことがあります。50mmはモデルさんとの距離的にもベスト。今回、使用させてもらったF1.2のレンズはピント面がシャープで、後ろのボケも素晴らしい。作例①~③を見てもらうとわかるのですが、背景のボケ味が非常にキレイです。ついでに開放F1.2のスーパースロー動画撮影を行ってみたのですが、このAFのフォーカスとフォーカスの移動がとてもスムーズです。Z7Ⅱの手ブレ補正もよく効いてくれました。ここに掲載している動画は手持ちで撮影をしています」
model:中村ナツ子
twitter:@magna_solitudo
site:https://www.nakamuranatsuko.com/
スタジオでビューティーライティング
ストロボのマエストロと呼ばれるお耽美写真家Kayさんといえば、外せないのがストロボでのスタジオワーク。元KERAモデルの東 真千子さんとテストシュート行いました。ストロボはNissinのMG80proとMG10、i60A、コマンダーAir10sを使用して2パターンの撮影を行いました。作例⑤は雑誌で見かけるようなビューティーをイメージした撮影で、ストロボの閃光時間で髪の毛を1本1本しっかりと解像させているのがポイント。作例⑥は中国風の衣装でイメージ撮影を行いました。余談ですがKayさんは雑誌(KERA)でビューティーページを担当していたことがある本格派です。
作例④ シャッター速度:1/200 絞り:1.2 ISO64 |
作例⑤ シャッター速度:1/200 絞り:5.6 ISO64 |
【Kay's VOICE】
「スタジオの作品撮りでも『NIKKOR Z 50mm f/1.2 S』を使用しました。今回は2つのシチュエーションを撮影。どちらもモデルさんの宣材(宣伝材料)に使用できるものになっています。ビューティー系のライティング(作例④、⑤)では、ちょっとイレギュラーなことをしました。せっかくF1.2のレンズを使っているので、スタジオ撮影では基本的にやらない絞り開放で撮影(作例⑥)に挑戦。雑誌や広告などのビューティー撮影では、肌の質感や髪の毛の質感を写し込むことが必須なので絞り込んで撮影するのが一般的です。絞り開放で撮影した感想は“ボケ感を活かした撮影をスタジオでできると表現の幅が広がる”と思いました。注意点としてはF1.2という被写界深度のとても浅い絞りは、ピントがシビアになるので、フォトグラファーやモデルの呼吸のタイミングがずれただけで狙ったピント位置から簡単に外れる。なのでピントを合わせるにはとても集中力が必要になってきますが、しっかりと狙った位置にピントが合った場合のシャープさとなだらかにボケていく描写力は他のレンズでは絶対に出せない独特で唯一無二の個性を発揮できます。
作例④⑤の撮影風景。ブロアーで髪をなびかせました。タイミングが重要。 | 作例④⑤と⑥でストロボの高さが違うのがポイント。 | アクセサリーは違うがストロボのセッティングは似ている。写真は作例⑥の撮影風景。 |
今回はスタジオ用の機材ではなく携帯性の高いニッシンのストロボを使用しました。クリップオンストロボを使うと低照度での光量のコントロールがしやすく、大型大光量ストロボでは難しいセッティングを簡単に組むことができます。ニッシンMG80proなどは大出力から小出力までの調整幅が広いので、開放絞りに対応したスタジオライティングに最適ですね。もうひとつイレギュラーは作例⑤の天使の輪。ワザと白飛びさせました。綺麗な天使の輪を作ってしまうと、いかにも“THEヘア&ビューティー”写真になってしまうので、敢て自然光のコントロールが難しいでしょう的な強い光を半逆光ぎみに当ててあげることで、ストロボのライティング感を軽減させることを狙っています。完璧ではなく、どこかに破綻した部分を作ることで自然さを目指す。仕事では許されないけど、自分の作品作りだからこそできる狙った破綻です。
作例⑥ シャッター速度:1/200 絞り:6.3 ISO100 |
中国風のイメージ撮影(作例⑥)ではグリッド付きのオパライトをメイン光にして、モデルの頭上にトップライトとしてストロボをセット。あと下からもすこし光をいれたかったのでモデル前にはカポックをセッティングして、柔らかい光を足しました。2つのシチュエーションともにモデルさんから見て左前のライトをメインにして、もう1灯を後ろ斜め上から頭へ向けて配置とセッティングは同じです。作例④と⑤はメインがソフトボックス、作例⑥はオパライトと仕上がりのイメージにあわせてモディファイアーのチョイスを使い分けています」
model:東 真千子
twitter:@machiko801
site:https://www.konomachinoko.com/
hair&maike up:キシコ
twitter:@kishico
studio:ニッシンジャパン
ロケ創作撮影でのミラーレスの可能性
作品撮りでも機材をテストしてもらいました。Kayさんは「精神と肉体の関係性また社会と個人の関係性の中にある美を探求する耽美派を標榜する」写真家。創作系の作品撮りでは桜や藤をバックに作品を作り上げています。最近ではストロボのテクニックにフィルターワークを合わせての作品にもチャレンジしているそう。今回は紅葉を背景に撮影。作品創りにおいての気を遣っていることなどについてお聞きしました。
作例⑦ シャッター速度:1/125 絞り:5.6 ISO100 |
【Kay's VOICE】
「はじめてミラーレス機を作品撮りに使ってみました。Z7Ⅱを使わせてもらったのですが、ファインダーがEVFで夜の撮影に最適でした。一眼レフでの夜撮影だとファインダーの中が見たまんまの真っ暗。それがEVFだと露出モードを反映させないモードに設定すると肉眼で見るよりも明るくなるんです。これまで夜の作品撮りだとモデルの表情を見てシャッターを切ることができませんでしたから革新的でした。作例⑦のようなロケでのストロボを使った作品撮りは15年ぐらい前からやっています。今でこそ機材が小型化して、誰でもロケで多灯ライティングできる印象がありますが、当時はとても大変でした。バッテリータイプのストロボは高価で、かつバッテリーの容量も小さかったので、屋外でストロボを使う撮影には、発電機を使って電源型のストロボを使う事が一般的でした。仕事であれば人手もそれなりにあるのでまだましですが。そんな時代でもクリップオンストロボをオフカメラで使う事がありましたが、今のように手元で複数のストロボの光量をコントロールできるコマンダーも存在せず、同調も赤外線スレーブを使ってのワイヤレス撮影か、シンクロコードを延長して使うかのかなり制限のある状態でした。しかもガイドナンバーは現在の半分よりも少し大きい程度のものでした。
カメラにコマンダーをつければワイヤレスで発光可能。 | 機材はバッテリータイプのモノブロックストロボを使用。 |
今では高性能のストロボとワイヤレスでコントロールできるシステムがあるので、とても簡単にできると思います。今回の屋外での作品撮りではストロボを4灯使っています。メインライト1灯、アクセントライトが3灯でクロスライティングの変化版という感じ。テスト撮影も含めて何度も同様の状況で撮影を継続しているので、ライティングのバランスがわかっています。屋外の過酷な条件で撮影する場合が多いのでモデルに負担をかけないようセッティングに時間をかけない事が大事ですね。また高い位置などに照明をセッティングする場合などはスタジオ勤務経験者などの助言のもとで安全に事故のないセッティングを行う事が必要です。作品撮りする方は注意をして行ってくださいね」
model:東 真千子
twitter:@machiko801
site:https://www.konomachinoko.com/
まとめ
【Kay's VOICE】
「普段はニコンD850を使っているのですが、実は今までD850が優秀なのでミラーレス機を使う気がなかったです。今回、『Z7Ⅱ』でテストシューティングをして、夜の真っ暗な環境でモデルの表情を見ながらシャッターを切れるということに気がつきました。作品撮りでは夜に撮影することが多いので、これだけでもミラーレス機を使う価値はあるなぁと考えを改めさせてもらいました。『NIKKOR Z 50mm f/1.2 s』のボケ味のすばらしさと『Z7Ⅱ』のミラーレス特有の使い易さはこれからの作品撮りの機材にちょうどいいと思いました。あと動画撮影も興味があるのでミラーレスを本気で購入を考えています」
Text:SATO TAKESHI