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  • [連載:マニアックレンズ道場13] TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD
    コンパクトで高解像度な最新設計の超広角ズームレンズ



 

明るいのに驚くほどのコンパクト、しかも高解像で寄れる

 

 

さすがに超広角なのでぼけはザワつく傾向

 

今回は「TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」を紹介します。2021年6月24日発売予定の最新の広角ズームレンズです。ただし、すでに電子書籍「TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD レンズデータベース」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0968Y4T68)を制作するために、「解像力」「ぼけディスク」「軸上色収差」「最大撮影倍率」「周辺光量落ち」「歪曲収差」といった各種チャートやテスト、さらに実写作例も撮影しましたので、「TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD」への結論から述べると下記のとおりです。

 

「開放F2.8通しの16-30mm相当の超広角ズームとは思えない小型軽量、しかも開放から高解像で、驚くほど被写体の寄れるレンズ」

 

TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDのおすすめポイントは

「16-30mm相当F2.8通しの明るい超広角ズームなのに小型軽量」

「コンパクトなのに絞り開放から予想以上に高い解像力」

「完全に被写体と接触するレベルの短い最短撮影距離」

の3つ。

 

残念ポイントは

「超広角なので仕方ないが、ぼけはザワつく傾向」

といったところです。

 

「コンパクトで高性能な広角ズームレンズ」を探している方におすすめ。ただし「35mm判フルサイズ用のぼけのきれいな広角ズーム」を探しているという方にはおすすめできないレンズです。

これらの最終的な結論に至った、それぞれのポイントを各種チャートや実写などから解説していきます。

 

 

わずか335g

 

とてもF2.8通しとは思えないサイズ

 

 

 

TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDを最初に手にして、思うことは全員同じでしょう。「小さい、そして軽い」です。

メーカーの公式スペックによると最大径が約73mm、長さが約86.2mm、質量は約335gです。と言われても、ピンとこないと思いますので、まずは手に持ってみました。筆者の手は軽く開いた状態で親指から小指までの距離が約17cm。成人男性としては小さめです。それでも持て余すことなく、しっくりと収まります。

APS-C向けとはいえ、16-30mm相当のF2.8通しズームとは思えないサイズです。レンズキャップやフードを装着、ズームをさせた実測値もまとめましたのでみていきましょう。

 


 

リアキャップ装着でフードとフロントレンズキャップなしの条件では、望遠端の20mmで約10cm、広角端の11mmにズームしても約12cmといったサイズ感です。また、フードを装着して、もっともレンズ長が長くなる広角端でも15cm以下。重さについても、前後レンズキャップ、フードを含めても400g以下と、ある意味不安になるほど小さく軽いレンズに仕上がっています。ちなみに筆者がいちばん似ていると感じたサイズ感はCanon EF85mm F1.8 USM(約Φ75mm×71.5mm 質量約425g)です。16-30mm相当のF2.8通しが、さほどの大きくない単焦点レンズのサイズ感に仕上がっています。

 


 

かなり軽いレンズなので、プラスチックを主体して鏡筒などは製造されています。しかし、ビルドクオリティがとても高く、動作などから安っぽさはありません。ズームリングやピントリングの動きもスムーズ。特にピントリングはとてもなめらかで時折マニュアルフォーカスで楽しむのもありかと思うほど、の仕上がりです。

さすがに軽くて、小さすぎて、光学性能が不安と思うところもありましたが、実はAPS-C向けというメリットを活かして、描写性能もとても高いレンズです。筆者は同じ性能ならレンズは小さくて軽いほうが正義だと思っています。そのため、TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDのサイズ感は素晴らしいと思います。構えることなく、気軽に使えるF2.8通しの超広角ズームといえるでしょう。

 

 

絞り開放から高解像

 

F2.8から周辺部まで十分以上の解像力

 


TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD/Sony α7R III/16mm相当/絞り優先AE(F8.0、1/400秒)/ISO 100/露出補正:+0.7EV/WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

 

いくらAPS-C向けのレンズとはいえ、さすがに小さすぎて光学的な性能はどうなの? とすら思ってしまうTAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD。しかし、さすがに最新設計の明るい広角ズームだけあって、解像力もかなり高いのです。まずは、掲載した作例のアップを確認ください。

 


 

F8.0まで絞っていますが、Photoshopの200%表示を切り出したものです。写真中央付近に小さく写っている3本の木をここまで解像しています。当たり前ですが、撮影時に肉眼では枝の形などはわかりませんでした。

さらに具体的に解像力チャートの結果もみていきましょう。

 


 

広角端の解像力チャートの結果からみていきましょう。

チャートはSony α7R IIIをクロップで使用して撮影しているため有効画素数は約1,800万画素。チャートの1.2が基準です。

超広角の11mmで開放がF2.8と明るいですが、中央部分は開放から非常にシャープな描写を見せてくれます。中央部分だけを考えるなら、どの絞りで撮影しても問題ないでしょう。

そして、気になる周辺部ですが、開放F2.8でも、そこそこ解像していますが、絞ってもあまり大きく改善してこない印象です。解像力のピークはF8.0からF11。中央部分を優先するならF8.0、周辺部を優先するならF11が筆者のおすすめです。絞り開放でも解像力がそこそこ高いためか、軽く絞ってもあまり大きく周辺部の解像力はアップしない印象。周辺部分までしっかり解像させるなら、F8.0やF11までしっかり絞りましょう。

F13以降では、絞り過ぎによる解像力の低下が発生するので、絞り過ぎには注意です。また、Sony α7R IIIの「レンズ補正」が初期設定の「オート」では補正がしっかり働き、倍率色収差や歪曲収差はほとんど観察されません。

 


 

望遠端の20mmも同条件で撮影しました。

そして、その結果は完全に予想以上の素晴らしいものです。中央部分の解像力は、広角端と同じように開放のF2.8からしっかりとシャープで高解像。しかも、注目してほしいのは周辺部分です。なんと絞り開放のF2.8から、かなりしっかりと解像、少しコントラストが弱いくらいでチャートの1.2をほぼ完璧に解像します。しかも、F4.0あたりまで絞るとコントラストも改善、全体解像力のピークはF8.0前後ですが、はっきりいって好きな絞りで撮影して問題ないと感じる結果です。かなり高性能といえるでしょう。

望遠端もF13以降では絞り過ぎによる解像力低下が発生するので、絞り過ぎには注意です。また、望遠端もカメラ本体の「レンズ補正」がしっかり働き、倍率色収差や歪曲収差はほぼ観察されません。

とても300gちょっとのコンパクトで軽量なF2.8通しの広角ズームの結果とは思えない非常に優秀な結果といえるでしょう。

 

 

最短撮影距離15cm

 

レンズフードが接触するレベルのマクロ性能


 

TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDの最短距離は15cm。数値だけみると「短いね~」くらいでしょう。しかし、実際には写真のようにとんでもなく短いです。レンズ交換式カメラの最短撮影距離はレンズ先端からではなく、撮影像面からの距離を表記します。TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDがいくら小さいといってもフードを付けて、レンズがもっとも伸びる広角端までズームするとマウント面からの実測で約13cm、これにマウント面から撮像素子の距離であるフランジバックの1.8cmを入れると約15cm。最短撮影距離とほぼ同じになります。そのため写真でみてもわかるように、最短撮影距離での撮影は比喩ではなく、レンズフードが被写体に触れるような距離です。

 


TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD/Sony α7R III/16mm相当/シャッター速度優先AE(F2.8、1/200秒)/ISO 3200/露出補正:+1.3EV/WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

 

広角端の最短撮影距離付近で撮影した息子です。レンズ先端から数cmしかないので、顔にぶつかる危険があり、レンズフードは外しています。しかし、圧倒的に寄れるので、ダイナミックでおもしろい写真が撮影できます。また、レンズ最前面に撥水性・撥油性に優れたフッ素化合物による防汚コートが採用されているので、子どもがレンズを手でつかむといったアクシデントにも安心感が高いです。最短撮影距離での最大撮影倍率は0.25倍と高く、超広角ながら素晴らしいマクロ性能を実現しています。

ただし、レンズ先端から数cmというワーキングディスタンスの短さは、ライティングや被写体、撮影条件を選ぶこともあるでしょう。とはいえ、寄れないよりも、寄れる方が圧倒的に便利です。

 

 

ザワつくぼけ

 

超広角なので仕方ないがぼけがあまり美しくない

 


TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXD/Sony α7R III/28mm相当/絞り優先AE(F2.8、1/2,000秒)/ISO 100/露出補正:+1.0EV/WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド

  

超広角のズームレンズなのだから、仕方ないともいえますが、TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDの弱点はぼけ描写でしょう。

作例は絞り開放F2.8の19mmで撮影していますが、背景でぼけているナノハナがザワつきます。ぼけがあまり美しくないのです。

チャートでも確認していきましょう。

まずは、ぼけディスクチャートです。

 

 


 

上が広角端11mmのぼけディスクチャート、下が望遠端20mmのものになります。

ぼけディスクチャートは、形が真円に近いほどぼけの形が美しく、ぼけディスク(玉ぼけ)のなかがフラットでザワつきなどのないものが、なめらかで美しいぼけが得られます。

TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDのぼけディスクチャートは、広角端の11mmも望遠端の20mmも絞り羽根の設計のうまさからか形は美しいのですが、質がいまひとつです。ザワつきが大きいため、ぼけになめらかさがなく、かなりザワつく傾向といえます。とはいえ、11mmからの超広角であることを考えると、ぼけにまで美しさを求めるのは酷なのでしょう。

 

 

まとめ

 

APS-Cのメリットを活かした幸せな明るい超広角ズーム

 

TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDに対する筆者のもっとも強い印象は、APS-C向けにすれば、開放F2.8通しの16-30mm相当の超広角ズームは、このレベルまで小さく、軽くできるのだ、というものです。本当に小さい。レンズが小さいとカメラシステムが小さくまとまるので撮影は本当に楽になります。

しかもTAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDは、しっかりと解像力も高く、近接撮影も得意です。弱点らしい弱点のない、よいレンズですが、超広角ズームにそこまで求めるのは酷なようですが、ぼけがザワつくのが唯一といえる弱点でしょうか。

とはいえ、コンパクトで軽量、高解像でマクロにも強いTAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDはAPS-C向けというメリットを活かした高性能でコンパクトな超広角ズームレンズといえるでしょう。

 


 

 


●TAMRON 11-20mm F/2.8 Di III-A RXDの基本スペック

対応マウント:ソニー E

レンズ構成:10群12枚

絞り羽根枚数:7枚

フィルター径:67mm

大きさ:Φ約73×86.2mm

質量:約335g

実勢価格:80,000円前後


(写真・文章:齋藤千歳 技術監修:小山壮二)

 

 

【Text&Photograph:齋藤千歳】 

https://pasha.style/article/999

 

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