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  • [連載:マニアックレンズ道場21] SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary
    触ると絶対ほしくなる魅惑の小型・軽量標準ズームレンズ

SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

実写チャート性能評価


Amazon Kindleで販売中の電子書籍「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09MMQ5F6X/ を制作するために、筆者は同レンジで「解像力」「ぼけディスク」「軸上色収差」「最大撮影倍率」「周辺光量落ち」「歪曲収差」といった各種チャートや実写作例を撮影・テストを行いました。このテスト結果などを元に「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」の魅力などをお伝えします。

製品概要

高性能小型軽量を狙ったAPS-C用標準ズームレンズ 

2021年10月末に発売されたSIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryは、シグマ初のAPS-Cサイズミラーレス専用のズームレンズ。35mm判換算で27mm~75mmの画角をカバーするF2.8通しの標準ズームレンズで、対応するマウントはソニー Eとライカ Lになっています。レンズ構成は10群13枚で特殊低分散ガラスのSLDレンズを1枚、非球面レンズを3枚採用。絞り羽根は円形絞りの7枚羽根。最短撮影距離は広角端で12.1cm、望遠端で30cm、最大撮影倍率は、それぞれ1:2.8と1:5で近接撮影に強くなっています。また、最大の特徴は、その大きさ。筆者が実際に使用したソニー Eマウント用で最大径が61.6mm、長さは76.5mm、質量は290gと、とてもF2.8通しの大口径標準ズームレンズとは思えない軽量小型ぶりです。対応するフィルターの口径は55mm。実勢価格は60,000円前後になっています。

注目ポイント

「小型・軽量」「シャープな描写」「高い近接撮影性能」「美しいぼけ」

様々なテストを行った結果、筆者は「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」の注目すべきポイントは「小型・軽量」「シャープな描写」「高い近接撮影性能」「美しいぼけ」の4点であると考えました。

そこで、これらのポイントを撮影したチャートデータなどとともに解説していきます 。

小型・軽量

SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryと比べても劇的に小さい


実はシグマは、今年2021年3月にもF2.8通しの標準ズームレンズ「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」を発売しています。こちらは35mm判フルサイズ対応とAPS-C専用の「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」とは若干カテゴリーが異なりますが、とても35mm判フルサイズ対応のF2.8通し標準ズームとは思えないほど、小型軽量で高性能と評判になり大ヒットしました。実は筆者も最近はメインレンズとして愛用しています。

しかし、写真で見てもらっても分かるように「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」と並べるとかなり大きい。単純に計算してみると質量で約1.6倍、体積で約1.8倍も差があり、35mm判フルサイズ用レンズとしては、かなりコンパクトな「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」が巨大に見えてしまうほどです。

そんな「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」のサイズをシグマは公式WEBで「心おどる小ささ」と表現しています。実際に「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」をボディに取り付けて、構えてみると、この表現が全く大袈裟でないことに気づくでしょう。あまりにレンズがコンパクトで、気軽で軽快に撮影が楽しめそうな期待感から、ウキウキしてきてしまうのです。まさに「心おどる小ささ」。 実際に触るとそれだけでほしくなるコンパクトさと言えます。


シャープな描写

中央部はもちろん、周辺部や望遠端もとても高解像


上に掲載したのは「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」とSony α7R IIIのクロップモード(有効約1,800万画素)で広角端を使って撮影した解像力チャートの撮影結果です。有効画素数から基準となるチャートは1.2。中央部の解像力はほぼパーフェクトと言える結果です。開放のF2.8からチャートの1.2を完全に解像。絞っていくと多少コントラストが上がりますが、どの絞りで撮影しても問題を感じることはないでしょう。周辺部も中央部に比べると開放付近での解像力は落ちるものの、十分以上に解像しており、絞るとさらに解像力がアップします。画面全体の解像力のピークはF8.0からF11あたり。広角端でも解像力に不満を感じることはほぼないでしょう。倍率色収差や歪曲収差もしっかりと補正されています。

さらに下に掲載したのが「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」の望遠端を使った解像力チャートの撮影結果。撮影条件は広角端と同じです。この望遠端の解像力は、広角端に比べても優秀。画面中央部は、絞り開放から非常にシャープ。絞ってもほとんど描写が変わらないほどです。また、周辺部は、中央部と比べるとわずかにシャープ感が足りませんが、絞り開放からチャートの1.2を完全に解像。単焦点レンズの50mmでも、ここまで画面全体で均一な解像力を発揮するレンズは珍しいと言えます。それでも解像力のピークはF8.0前後。とはいえどの絞りを選んでも、高い解像力で画面全体を描写してくれるはずです。望遠端側も倍率色収差や歪曲収差はとてもよく補正されています。

ちょっと驚くほど、シャープで高解像なレンズです。注意したい点は絞り過ぎによる解像力低下が広角端、望遠端ともにF13あたりからはじまるので、絞りすぎには注意しましょう。


高い近接撮影性能

マクロレンズ並みのアップを可能にする近接撮影能力


シグマの公式WEBにある仕様表によると「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」の「最短撮影距離」は「12.1(W)-30(T)cm」、「最大撮影倍率」は「1:2.8(W)-1:5(T)」。いまいちピンとこない方も多いと思いますが、広角端の最短撮影距離は約12.1cm、最大撮影倍率は約0.36倍、望遠端の最短撮影距離は約30cm、最大撮影倍率は約0.2倍というわけです。確かに優秀なのですが、スペックからはマクロレンズ並という性能は伝わってきません。しかし、実際に広角端の18mmで最短撮影距離の12.1cmから撮影した結果が上に掲載した写真になります。対応する撮像素子サイズがAPS-Cのため、実際に画面いっぱいに写る範囲は約67mm×約44mm。35mm判フルサイズのハーフマクロレンズよりも、狭い範囲を画面いっぱいに写すことができるのです。広角端に比べると、望遠端は最大撮影倍率が約0.2倍と地味ですが、焦点距離が長い分、撮影時の被写体の変形が小さく、スッキリと撮れるので、こちらも活用するとよいでしょう。下に実際に撮影した写真を掲載しましたが、約120mm×約80mmの範囲を画面いっぱいに撮影できるので、思う以上に活躍の範囲は広いと思います。どちらにしても、近接撮影性能の高い標準ズームレンズと言えるでしょう。


美しいぼけ

非球面レンズによる輪線ぼけの影響も少なく、なめらかなぼけ


画面内に極小のLEDを入れ、玉ボケを発生させ、画面各部で、その玉ぼけの質や形などを観察して、ぼけの様子を評価しています。

上に掲載したのが「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」の広角端のぼけの様子です。前ぼけ、後ぼけともに玉ぼけのフチに嫌な色つきはありません。玉ぼけの内部の描写もわずかなザワつきはあるものの、非球面レンズの影響と言われる同心円状の同心円状の輪線ぼけは気にならないレベルで、18mmの広角端とは思えない優秀な結果です。ぼけの形は、7枚羽根の円形絞りの効果もありF4.0あたりまで真円に近い形状を保ちます。

気になる望遠端の50mmのぼけの様子は、下に掲載しました。ぼけのフチの色付きは、前ぼけではほとんどありませんが、後ぼけでわずかに発生しており、シーンによっては気になることがあるでしょう。また、玉ぼけの内部描写は、小さなツブツブが並ぶような独特のクセはありますが、実写のぼけは滑らかです。ぼけの形は開放付近からF4.0あたりまでは真円に近い形を保つ優秀な結果。やや気になるのは、広角端よりも非球面レンズの影響といわれる同心円状の輪線ぼけが目立つことです。 

実写画像とまとめ

SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | ContemporarySony α7R III34mm相当/シャッター速度優先AEF2.81/125秒)/ISO 8000/露出補正:+1.0EVWB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド 風呂上がりに服を着ることを拒否して脱走中の我が家の息子。レンズが小さいと、こういった何気ないシーンを撮る楽しさを再発見させてくれます。



SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | ContemporarySony α7R III27mm相当/絞り優先AEF8.01.0秒)/ISO 100/露出補正:+0.7EVWB:晴天/クリエイティブスタイル:ビビッド レンズ性能が高いので本格的な風景写真も十分に楽しめます。しかも小さくて軽いので撮影旅行などでは高い機動力を発揮してくれるでしょう。

「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」を持っていてもほしくなる

筆者のカメラのメインボディは、35mm判フルサイズのSony α7R IIIです。しかも「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」を愛用しています。それでも「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」がほしくて仕方ありません。仕事を含めた普段の撮影では、広角端28mmからクロップして105mm相当までカバーしてくれる「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」の方が使い勝手もよく、不満もないのです。しかし、「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」の「心おどる小ささ」は、同じ標準ズームレンズでありながら、完全にカテゴリーの違うレンズと言った印象。普段息子を撮ったり、旅先の風景をスナップしたりするのであれば、圧倒的に「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」を使いたい。その手のひらに収まるサイズ感を知ってしまうと、みなさん所有したくなると思います。

また、筆者は「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」も、今回の「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」も各種チャートを撮影しテストしたので、ざっくりとした印象の違いもお知らせしておきます。ただし、35mm判フルサイズの有効画素数約4,240万画素とAPS-Cの有効画素数約1,800万画素で撮影した結果から印象なので、完全な比較ではないという前提で理解してもらえると幸いです。

「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」は「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」に比べて、あくまで印象ですが、広角端周辺部と望遠端の描写がシャープに感じ、近接撮影能力では「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」をクロップで使うことを考えるとほぼ同等。ぼけの美しさでは及ばないといった感じです。

びっくりするほどコンパクトで「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」といい勝負と言えるほどの高性能。何よりもレンズが小さくて高性能というだけで、こんなにウキウキできることを改めて教えてくれた「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」は、 APS-C 機ユーザーだけでなく、筆者のような35mm判フルサイズユーザーにもおすすめです。ぜひ一度、そのサイズ感を店頭などで確かめてみてください。 

 

 


●SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporaryの基本スペック

対応マウント:ソニー E、ライカ L

レンズ構成:10群13枚

絞り羽根枚数:7枚

フィルター径:55mm

大きさ:Φ約61.6×76.5mm(ソニー Eマウント)

質量:約290g(ソニー Eマウント)

実勢価格:60,000円前後

 

(写真・文章:齋藤千歳 技術監修:小山壮二)

https://pasha.style/article/999

 

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