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  • 【GODOX】レトロデザインのクリップオンストロボLux Senior&Junior』レビュー
    レトロデザインだけではなくシンプルな機能で楽しく遊べる




レトロデザインが魅力のクリップオンストロボGODOX Lux シリーズ

デザインが自慢のシンプルクリップオンストロボ


「GODOX」は1993年に設立された中国・深センの照明機器メーカーです。専用リチウムイオン電池を用いて高速チャージが可能で、ワイヤレスでの調光が可能な各種ストロボ製品で知られています。本誌読者のみなさんにも、ユーザーの方も少なくないはず。日本国内では株式会社ケンコープロフェッショナルイメージング(KPI)が取り扱っています。


さる11月25日よりKPIが発売を開始したのが、GODOX 「Lux(ルクス)シリーズ」クリップオンストロボ2種。円形のリフレクターのある「Lux Senior(ルクス・シニア)」(税別22,500円)と、コンパクトな「Lux Junior(ルクス・ジュニア)」(税別12,800円)。どちらもレトロデザインが特徴のクリップオンストロボです。


両者共通の特徴は以下の通りです。KPIの正規品にはKPI発行の保証書と日本語取扱説明書が付属します。なお、保証書番号とQRコードのステッカーが製品に貼られていますが、掲載写真では画像処理で消しています。


調光モードはマニュアル(Mモード)とオート(A)モードを備えます。マニュアル調光ではフル発光から1/64までの7段階で光量調節が可能。オートはTTLではなくストロボ単体で光量を制御する外部自動調光です。そのため、装着して同調が可能なボディならば、カメラボディのメーカーや機種を選ぶことなくどの機種でもAモードが使用できます。


また、他のストロボの発光を感知してスレーブ発光を行う光制御機能が使用できます。


シンクロケーブルも付属するので、ホットシューがなくてもシンクロ接点があるカメラならば接続が可能です。本体のシンクロソケットはミニミニプラグと呼ばれる直径2.5mmのフォーンプラグ。


照射範囲は固定式で28mm相当です。


以下では、個別の特徴について記していきます。




GODOX Lux Seiorは開くとやや大柄なので一眼レフにも合うサイズ。Nikon Dfにもよく似合います。


閃光電球と発光器を模した「Lux Senior」

昔の映画で見たことがありますよね


「Lux Senior」は「60年代スタイル」とGODOXは称しています。エレクトロニックフラッシュ(ストロボ)が本格的に使用される以前の、使い捨て式の閃光電球(フラッシュバルブ)を円形の反射傘(リフレクター)のある発光器(フラッシュガン)に取りつけたかのような外観が特徴です。古い映画で記者が大判フィルムカメラのスピードグラフィック(スピグラ)に取りつけて光らせている、あの道具です。


本体サイズは公称で幅114mm×高さ176mm×奥行84mm(使用時)/227gです。




Nikon Fにとりつけた1970年ごろの発光器「フラッシュユニットBC-7」とデッドストックのナショナル閃光電球。閃光電球はいちど発光させたら交換する必要があります。なお、閃光電球は有楽町のダイヤモンドカメラでいろいろご教示いただき入手しました。互換電池も取り扱っているそうです。


前面のフタにはGODOXの押し印が入っています。上品でいい雰囲気です。蓋を閉じると幅約62mm×高さ約128mm×奥行約48mm(実測値)になります。




発光管スイッチ(赤丸の部分)を左にスライドすると発光管がポップアップします。




発光管をポップアップさせたところ




反射傘を広げたところ。金属製の反射傘の質感もいい感じです。

使用する際には、フタを開けてから折りたたまれている金属製の反射傘を開きます。閃光電球のような形状の発光管は、フタの内側にある赤い発光管スイッチを押すとポップアップします。しまうときには、発光部分は押し込んで収納します。発光管が収納されていると、背面のOFF/M/Aダイヤルをオンにしても、テストボタン/リサイクルインジケーターが緑色にはなりません。また、反射傘を収納すると一般的な首振り式のクリップオンストロボよりも、長さと幅は小さくなります。


ガイドナンバーはフル発光時にGN14(ISO 100)。反射傘や発光部の向きを変えることはできません。背面には。発光器にあったような計算パネルのようなデザインの出力調整ダイヤルがあります。




背面には回転式の出力調整ダイヤルがあります。充電は側面にあるUSB Type-C規格端子から行います。充電中はテストボタン/リサイクルインジケーターが赤く点灯します。レディライトも兼ねているので、緑色に点灯して撮影時に充電完了を知らせる役目も果たします。

電源は内蔵式リチウム電池で、発光からチャージまでのリサイクルタイムは最大3秒。一度の充電で約150回まで使用できます。USB Type-C規格端子があり、そこから充電します。リチウム電池は「3.7V 1,700mAh、入力:5V 2A」とあるので、スマホやノートパソコンに充電できるものならば、モバイルバッテリーでも充電できるでしょう。レトロなデザインの中身はいかにも21世紀の道具という感じがします。



80年代の小型クリップオンスタイルの「Lux Junior」

一眼レフ世代のもと写真少年にはなつかしいかも




Lux Juniorは小柄で、α7IIなどのような小柄なミラーレス機にも似合うサイズ。公称値は幅約73.8mm×高さ約50.2mm×奥行71.8mm/130g

Lux Juniorのほうは小型のクリップオンストロボです。GODOXでは「80年代スタイル」と称しています。当時のフィルム一眼レフでも違和感を感じさせないでしょう。発光部は固定式でオーソドックスなスタイル。ガイドナンバーはフル発光時にGN12(ISO 100)。




Lux Juniorの発光部。固定式です。



背面と側面。光通信を設定するOFF/S1/S2スイッチは側面にあります。



電源は単4形乾電池を2本使用します。

電源はNI-MH電池または単4形アルカリ乾電池を使用します。そのため、重量も約130グラムと非常に軽量です。カメラバッグの中に入れておいても邪魔になりません。ボディサイズの小さいミラーレスカメラにもよく似合います。



あえて直射光でドラマチックに撮るのもおもしろい

光の質感を意識して使おう


両者ともに、反射傘や発光部は固定式です。また、光を拡散させるディフューザーなどは用意されてはいません。そのためか、バウンスさせてストロボを使うことに慣れている筆者には、光の質はやや硬いように思えます。




Lux Seniorの直射光で撮った、海岸で拾ったクルミ。直射光ではやや光の質が硬いように思えました。

とはいえPASHA STYLE読者のみなさんならば、シンクロケーブルやラジオスレーブ、ライトスタンド、アンブレラ、ディフューザーなどを用いて、光の向きや硬さを工夫することはむずかしくはないはずです。




シンクロケーブルを使って左側から光を当てました。非常にドラマチックな雰囲気です。



ISO400まで感度を上げて、ライトスタンドにLux Seniorを立ててアンブレラを用いてバウンスさせました。マニュアル調光でフル発光させています。光の質がずいぶんやわらかくなりました。小物であればアンブレラを使ってバウンスさせることができます。



ニコンTTL調光コードSC-29に接続させたところ。Lux SeniorにはTTLはないのでやや大げさなケーブルです。でも、コイルコードがよく似合う気がしませんか。



青空をバックにして交通標識に向けてマニュアル調光でフル発光させました。シャドー部分が明るくなっています。背景の露出を合わせるか、さらに露出アンダーぎみにして直射でデーライトシンクロをすると、ドラマチックな感じに写せます。

須田一政やマーチン・パー、エリックといった直射光のデーライトシンクロを効果的に使う写真作家もいますよね。彼らのような仕上がりをめざして、意図的に直射光をあてる撮影手法もよさそうです。たとえばマニュアル調光モードにして、やや強めに発光させるとドラマチックな印象にできるでしょう。



キャッチライトや補助光としても役立つはず

アクセントに使える


両者のガイドナンバーはフル発光時にGN14およびGN12と、カメラのポップアップ式内蔵ストロボくらいの光量です。したがって、一灯だけならば立位のモデルの全身に強く光を当てるような昨今流行している使い方ではなく、ウエストから上、もしくはバストアップなどの構図でスナップ撮影のように撮る、そんな用途に向きます。


小さい被写体であればブツ撮りもこなすことができます。テーブルフォトも楽しめます。




斜め左上から主光源をあてただけで、シャドーがつぶれてしまいます。



画面右前側から1/64の光量でLux Seniorの光を当てています。光信号通信(S1)でLux Seniorをスレーブ発光させました。シャドーが持ち上がりましたが、レンズにある「カニの爪」(露出計連動爪)の影がはっきり出ています。



画面右前に置いたLUX Seniorを右側にある白い壁に向けてバウンスさせました。


みなさんもご存知のように、ストロボガイドナンバーはカメラのISO感度を上げれば大きくすることができます。デジタルカメラで用いるならば、ISO感度を積極的に上げて使うことは簡単です。


絞り値を大きくして被写界深度を稼ぐ商品撮影などではなく、人物撮影で絞り値を小さくしたい場合には、光量を減らしたいことも多いでしょう。また、シャドーを軽く起こす補助光の役目、あるいは人物の瞳にアクセントを入れるキャッチライトを与えることは、十分に対応できるでしょう。


スタジオでセットを組んだあとに、仕上げのアクセントライトとして、古い京セラ時代のコンタックスGシリーズ用TLA 200をいまでも使っているファッション写真家の方の撮影現場を、筆者は拝見したことがあります。そういう用途には、新品で入手できて発光管が劣化していないGODOX Luxシリーズをおすすめできますね。



ストロボガチ勢のみなさんでも楽しめるはず

工夫次第でいろいろと遊べる


従来のGODOX製品はいずれも、どちらかというとプロやアドバンストアマチュアに向けた、ハイスペックながら比較的価格を抑えている真面目な業務用製品という印象がありました。


ところが、このLuxシリーズは高速チャージハイスピードシンクロ、連続発光、TTLという先進機能ではなくむしろ、レトロなデザインや遊び心のほうに重点が置かれているようです。内蔵ストロボのないフィルムカメラやレトロデザインのデジタルカメラを「かっこいい」「かわいい」と感じて購入し「エモい写真」を愛好するユーザーに向けて、クリップオンストロボをカジュアルに使ってほしい、外付けストロボを使うユーザー層を増やしたい、というねらいがあるのではないかと想像しています。


筆者はそんなターゲットユーザーにはあてはまりそうにありませんが、むかしの閃光電球の発光器を所有していても、じっさいに使用したことはりません。だから、Lux Seniorの反射傘を広げる操作はとても楽しく思えました。操作が楽しいクリップオンストロボに出会ったのは初めてです。


さらに、試用中にも何人にも声をかけられました。もしかしたら、コミュニケーションツールとしても役立つかもしれません。




GODOXのウェブサイトより画面キャプチャー。Color Editionも日本の代理店で扱ってくれたらなお楽しめそうですよね。

KPIが取り扱うのはいまのところブラックのモデルのみですが、Lux SeniorにはColor Editionと称する、赤、ピンク、白、ミントグリーン、グリーンのモデルもGODOXからは発売されています。日本国内でも好きな方は少なくなさそうとは思うのですが、いかがでしょう。外観が素敵なストロボ製品として現時点では唯一の存在なのではないでしょうか。


PASHA STYLE読者のみなさんはどちらかというと、ワイヤレス調光でデーライトシンクロを使いこなすような「ガチ勢」の方が多いのではないでしょうか。GODOX Luxシリーズはむしろライトユーザー向けの製品にも見えますが、本気ユーザーのみなさんならば楽しい使い方を工夫できるはずだと思い、筆を執りました。みなさんの参考になればさいわいです。




写真・文章:秋山 

著者略歴
秋山 薫(あきやまかおる)

編集者・写真家
1973 年生まれ。鉄道に興味があって写真を始め、いつのまにかカメラ・写真好きに。月刊カメラ誌編集部員、季刊カメラ誌編集長を経験。現在はおもにカメラ・写真関連記事の編集者・写真家として活動し、Kindle電子書籍『ぼろフォト解決シリーズ』『Foton 機種別作例集』の編集・執筆も行っている。

blog
https://saliut1500s.blogspot.com/










text:taka