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  • キヤノンの最新技術を見学してきました
    技術展示会『Canon EXPO 2023』





キヤノンが8年ぶりに技術展示会『Canon EXPO 2023』を10月18日~20日にパシフィコ横浜ノースで開催。カメラやプリンターなど写真撮影や動画撮影に関わる最新技術からMRIやCTなどの医療系の技術、人工衛星などの宇宙で活躍する技術などさまざまな技術がお披露目されました。今回のレポートでは写真撮影に関する最新技術を中心に編集部サトーが気になったものを紹介したいと思います。



 


 


会場は写真発祥の地である横浜にあるパシフィコ横浜ノース。


会場では最新のRFレンズをはじめとした製品の展示とタッチ&トライのコーナーがありました。


普段あまり見ることがないCTやMRIなどの大型の医療機器も展示されていました。






まずはカメラ系のアイテムから、10月27日に発売されたRFマウントの『RF10-20mm F4 L IS STM』や9月に発表されたRFシネマレンズ「PRIME Lens」シリーズ7本などが展示されていました。機材をお試しできるエリアではPower Shot Zoom(望遠鏡)を体験してみました。いつもの取材だとカメラ系のアイテムしかテストすることがないので、望遠鏡の体験は新鮮でした。なんとこのPower Shot Zoomは望遠鏡なのに写真と動画を撮影することができます。ゴルフや野鳥鑑賞ではメモ代わりに使えて便利そうです。



 


 


10月に発売された35mm判フルサイズで超広角をカバーする『RF10-20mm F4 L IS STM』。

9月に発表されたシネマレンズも展示されていました。写真は『CN-R50mm T1.3 L F』。


タッチ&トライのコーナーでは撮れる望遠鏡という新機軸を打ち出したPower Shot Zoomも体験できました、






 





このイベントの面白いところがキヤノンの最新技術をわかりやすく解説してくれるところ。キヤノンの望遠といえば白い望遠レンズを思い浮かべる方も多いですよね。実はあの白レンズにはキヤノンの最新の塗装技術がつまっているのです。遮熱塗料が採用されていて、熱の影響による部品の変形を抑制して画質の低下を抑制しているというからビックリ。

 

塗装の話


 


 


従来の塗料と耐熱塗料の違いを図入りで紹介。赤外線の反射型顔料を使用することで従来の遮熱塗料よりも赤外線の反射率を38→67%へ高めている。

熱の影響でどのぐらい実写に影響があるのかを示したのがコチラ。写真入りで紹介されると熱による影響が大きいことがわかる。

実際にどのぐらいレンズが温まっているのかサーモグラフィーで表示されていました。左が通常の塗料で右が耐熱塗料。右側の方が高温の白い部分が小さいのがわかる。
 



 

それ以外にDOレンズやSWCコーティングがわかりやすく解説されていました。難しい技術の話ですが、実物を展示しながら図入りで分かりやすく解説されていて超面白かったです。


DOレンズ


 


 


DOレンズを採用することでレンズを小型軽量化することに成功。写真上がDOレンズ非搭載のモデルで、写真下がDOレンズ搭載モデル。大幅に小型化しているのがわかる。
写真左がDOレンズの金型で、右が実際のDOレンズ。DOレンズは逆の色ズレを作り、通常のレンズで発生するミクロの色ズレを打ち消すことで屈折レンズよりも小型できるのがメリットだ。

実際にDOレンズを顕微鏡で500倍に拡大してみるとレンズの表面が格子状になっているのがわかる。通常の色ズレとDOレンズの逆の色ズレを組み合わせることで屈折レンズの色ズレを打ち消す。






 

SWC


 


 


SWCは広角レンズなどに多く採用されている技術で、逆光により発生するゴーストなどを軽減してくれる。
レンズ表面に円錐形の構造体をコーティングすることで反射防止性能を高めている。写真は10万倍に拡大したSWC構造を現した模型。
写真右がSWCありと写真左がSWCなし。SWCありを見るとまるでガラスが嵌っていないような低反射を実現しているのがわかる。






 







会場で一番注目を集めていたのが、ミラーレスカメラのEOS RFシステムを使ったエンターテインメント系の技術でEOS VR SYSTEMで作られた8KのVR映像。VRゴーグルを装着すると歌手のゴスペラーズが目の前にいるような高画質な映像が楽しめました。しかも自分視点で映像を体験できるので臨場感が凄い! 写真では紹介できないのが残念です。

 

 

こんな技術も展示されていました① マルチカメラ撮影を1人でコントロールできるシステム



通常、マルチカメラ撮影となるとカメラの数だけカメラマンが必要になるのですが、キヤノンの最新のシステムを使うとなんと1人のカメラマンでマルチカメラ撮影が可能となります。メインのカメラは有人で、残りのカメラはコンピュータによって制御されます。ライブなど動きのある被写体でカメラが自動追尾で撮影してくれるのは画期的です。



 


 


1人で複数のカメラをコントロールすることができるシステム。

メインカメラの上には複数のカメラで撮影された画像を表示するモニターを設置。


リモートカメラ『CR-N700』に被写体をどのサイズで撮影するのかなどを設定するとカメラマンがいなくても自動で撮影してくれる。








こんな技術も展示されていました② プリント技術


素材やプリントする形状が違ってもSCM技術を使うと自分の想像通りの印象に仕上げることができる。ちなみに上の写真は4台の異なるプリンターで印刷。


写真をプリントして展示する時に画面で見ていた色と違って色味が合わないと思ったことありませんか? そんな悩みを解決してくれるのが、キヤノンが開発しているSuper Color Management(略してSCM技術)。従来の印刷だとプリンターと用紙の組み合わせで色の表現できる範囲が変わるので、自分が思い通りの色にするのが難しい。SCM技術はそんな悩みを「どのように見える」「どう認識する」をベースに人の感じる色を定量化し、人の目で見た印象に再現して印刷できるようしてくれる。この技術がすごいところは印刷する素材が変わっても印象を揃えることができるところです。




 


 


自宅のプリンターと会社のプリンター、印刷所のプリンターで色が合わないという悩みを解決してくれるのがSCM技術。

SCM技術は人の感じる色を定量化し、人の目で見た印象に再現してくれるのでプリントする素材や形状に左右されないのがポイント。

写真の右と左では異なる素材と異なるプリンターで印刷しているが、SCM技術を使うことで違和感のない見た目に仕上げている。





 

こんな技術も展示されていました③ 小型人工衛星



グローバルな企業であるキヤノンはなんと小型人工衛星も作っています。注目したいのは観測用に搭載されているカメラ。なんと2017年に打ち上げられた人工衛星CE-SAT-IにはEOS 5D MarkIII、2020年に打ち上げられた人工衛星CE-SAT-IIにはEOS M100が採用されていました。写真を見て貰えばわかるのですが無加工です。普段使われているカメラが宇宙で活躍していると思うとなんだか誇らしくなりますね。



 


 


写真は打ち上げられた人工衛星で撮影されたもの。

人工衛星CE-SAT-Iに搭載されたカメラはEOS 5D MarkIII。ほとんど加工をしないで使われているのがわかる。


2020年に打ち上げられた人工衛星CE-SAT-IIにはEOS M100が採用されていました。

 

 



まとめ

ポートレートメディアが技術展示会を取材して記事化できるのか?と疑問だったのですが、行ってみたら超面白かったです。カメラの技術はもちろんのこと医療技術もあり、実はカメラの技術が宇宙から身近な病院にも使われていることを知って大変勉強になりました。写真は最新のCTとMRI。大きな病院に行かないとなかなか目にすることない機械なので説明をしてもらうだけでドキドキでした。最近は開放F2.8 で広角から中望遠をカバーする「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」が発表されて、ますますキヤノンからは目が離せないですね。




Text:TAKESHI SATO