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        育ち盛りの写真家5人展〜ELEMENTS〜
 これからの写真文化を担う若手写真家たちの作品展
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- 左から福井麻衣子さん、大貝あつしさん、田口るり子さん。上田晃司さんとコムロミホさんはご不在。ざんねん。 
 
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        いつも弊誌をサポートしていただいている 
 PASHA STYLEポートレイトナビゲーターの
 福井麻衣子さんが恵比寿で合同写真展に
 参加されているということで
 ぶらりと遊びにいかせていただきました。
 1階に展示スペースとカフェがある
 とてもきれいなギャラリーの地下1階が会場です。写真展のタイトルは「育ち盛りの写真家5人展」。 なんだかとても健康的でポジティブな 
 ほのぼのタイトルじゃないですか?
 とは裏腹に主催されているのはアサヒカメラの
 コンテンツ制作ディレクター大貝あつし氏とは。
 これは羊の皮をかぶった狼のような
 キレッキレの写真展の匂いがプンプンしてきます。
 白い階段を降りて会場に入ると壁面5面、
 各幅4mくらいのスペースにゆったりと
 5人の写真家の作品が展示してあります。
 平日の午後にもかかわらず多くの来場者が
 じっくりと写真を楽しまれていました。
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        今回のテーマは「ELEMENTS(元素)」。 
 この大地に存在するすべての元素の
 根源にあるとされる「火、水、土、木、金」の
 要素をそれぞれの写真家が表現しています。福井麻衣子さんのテーマは「火」 自分の中での「火」というものを考えた時に、激しい炎というよりは、蝋燭のような、見つめいていると心が静かに透明になっていくような、そんな「火」を表現しようと思いました。そして同時に頭によぎっていたのが「初心に戻る」ということでした。仕事とは違う、自分の中の大切なものを置いておく場所。それが初心に戻って純度100%で作品を撮り、展示するということだったと思います。ですからヘアメイクもスタイリストもつけず、モデルと1対1で濃密な、心の健康にいい撮影にできたと思います。アウトプットも満足のいくものになりました。(福井) 田口るり子さんのテーマは「土」 私は女性のヌードを撮ることが多く、様々な切り口で作品を撮りためています。今回「土」というテーマをもらった時に、1960年代のSF映画「ミクロの決死圏」をふと思い出したんです。ミクロ化した科学者たちが人体の中に入っていくっていうお話ですが、土もどんどんクローズアップしていけば1粒1粒の粒子になる。なんとなく人間も同じだなと感じました。そこで撮りためている女性の身体の写真を再構築して、岩石が風化して土になっていくプロセスを表現しました。(田口) 大貝あつしさんのテーマは「金」 金の色は、今回のテーマの元となる「五行思想(古代中国で生まれた自然哲学)」でいうと白なんですね。さらに金の意味を調べていくと「従革」という言葉が出てくる。従革とは「世のためになっている存在」を表しているそうです。そこでまずモノクロの写真にしよう。そして自分の写真を変えてくれた(自分のためになっている)存在のモデルさんを撮ろうと決めました。自分にとって大切な、彼女としか創りえない作品になったと思っています。僕は写真家ではありませんが、写真誌に携わるディレクターとして恥ずかしくない展示になったと思います。(大貝) そして 
 コムロミホさんのテーマは「水」
 上田晃司さんのテーマは「木」
 直接お話は聞けなかったけれど
 とても上質なモノクローム写真と
 風景、スナップの展示でした。
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        ひとつの木にそれぞれの実をつけるかのような 
 今回のグループ展の成り立ちを聞いていると
 未来の写真文化に対する熱い想いがありました。僕は写真家ではないけど、写真業界に携わる人間として、この世界を盛り上げていきたいという思いがありました。そんな時に年代の近い若い写真家の皆さんに声をかけたのがこの写真展の成り立ち。はじめにみなさんに伝えたことは「自由に作品を撮ってほしい」ということでした。プロとして生業として写真に携わっているとなかなかそういう自由はありません。だからここは自由に思うままに撮った作品を展示する場所にしたかった。そして、日本の写真文化をもっといいものにするために「作品」でご飯が食べられるようになって欲しいんです。だから若い写真家のみんなが作品を発表できる場を創りたかったということです。今は5人だけの小さなムーブメントですが、いつかもっと大きな波になることが写真業界にいる僕の願いというか夢なんですね。(大貝) いろいろなお話を伺い、写真を見ていると 
 時間はあっという間に過ぎてしまいました。
 最後にアサヒカメラのディレクターから見た
 ポートレイトのこれからとは。昔と比べるとポートレイトもずいぶん変わりました。以前はモデルをいかに美しく撮るかということが多かったように思いますけど、最近のアサヒカメラへの応募作品やInstagramなどにあがる写真をみていると、そういうところからひとつ抜け出した表現が多くなってきている。例えば人物を風景の一部として捉えて表現したり、ポートレイトなのに顔が見えない作品だったり。より写真の中に自己表現や叙情的なものを投影するような。人というものをどうつかって写真として定着させるかという思考の多様化が感じられますね。それからフィルムへの回帰。僕たち世代からするとフィルムは昔からあるもので、現在のフィルム調デジタル写真やフィルムそのもので撮る人が増えている事象は「原点回帰」と捉えてしまうんですが、すごく若い世代からするとデジタルこそ原点。フィルムは新しいものなんですよね。新しい表現を手に入れた彼ら彼女らの撮るこれからのポートレイトを見てみたいし、期待しています。(大貝) 
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        現在進行形の若手写真家5人の展示は 
 7月14日(日)がファイナル。
 最終日にはトークショーも開催されるので
 そんな写真家たちの話を聞いてみるのも
 これからの作品作りのヒントや
 モチベーションになるかもしれません。写真展の概要はこちらのページに。 
 https://pasha.style/article/772
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        【TEXT KAWANO KIMIHIRO】 


 
 
 






