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SIGMA x PASHASTYLE編集長 対談
シグマ流『モノづくり』にかける拘りと想い!! -
対談は神奈川県川崎市のシグマ本社で行われた。
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シグマの未来を熱く語る山木社長(写真右)とPASHASTYLE編集長ooxo(写真左)。
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シグマ製品はどのようなジャンルでも幅広く使われているが、ポートレイト業界でもシャープな写りや解像感、美しいボケが高評価を得ている。
2018年9月には「Lマウントアライアンス」が発表され、シグマはパナソニック、ライカと提携した。そのシグマの山木和人社長に、これからの展開やLマウントの今後について、PASHASTYLE編集長のooxoが話を聞いた。
(インタビューが行われたのは、2019年7月にLマウントレンズ3本、フルサイズデジタルカメラfp(非フォビオン)の発表がされる以前。現在はその全てが発売中。)
シグマ流“モノづくり”にかける拘りと想い、そして未来への展望とは――。
ooxo「今はデジタルが主流となり、発表はSNSという時代ですが、シグマさんとしては今後どういったアプローチをお考えですか?」山木「SNSなどの普及により、表現の場が多様化しています。ですから、シグマはより良いものという“一直線の方向”と、バラエティに富んだ“色々なタイプ”という方向の、両方を追求していきたいと思っています。デジタルになったことでカメラの性能が上がり、レンズに対する要求も高まった。ここからは性能の良さだけでなく、少しクセや表現力のあるレンズなど、沢山の可能性があると思います。」
ooxo「ふわっとした描写のレンズは、せっかく綺麗に撮った写真を壊すことになるため、メーカーとしては追求するところではないというお話を聞きましたが、そうした部分も視野に入れて開発していくと?」山木「色々な可能性があります。例えば収差が多く出る昔風のレンズというのも、ない話ではない。現代の技術で特徴あるものを作るなら、今までの積み重ねの上に新しい方向性を築いていくことになります。例えば解像度やディテールは残しつつ、球面収差を使ってふわっとしたボケを出すとか、現代的なクセのあるレンズならできると思います。」
ooxo「撮影会でもシグマさんの85mmや50mmを使っている方をよく見かけます。そういった意思が共感されているからこそ、ユーザーが多いのでしょうか?」山木「写真が好きな方にご支持をいただくのは非常に嬉しいことです。ものづくりを続けていく以上は難しいものに挑戦したい。今までにない、他社さんにはないようなものをご提供することは、作る側の喜びでもあります。他社さんのやり方は分かりませんが、一般的にはマーケットリサーチの結果、吸い上がってきた意見を平均化して製品化することが多いと思います。当社ではまず、お客様が困っていることを考えます。問題点から出発し、製品が目指すべきゴールやビジョン、コンセプトを共有したうえで設計者に意見を聞き、提案させる。」
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ooxo「新製品では、Foveonセンサーのフルサイズが出るそうですね。」
山木「フルフレームのFoveonセンサー搭載カメラを来年発売します。もう少し早い時期に発売する予定でしたが、センサー開発に想定よりも時間がかかり、準備中です。」
ooxo「パナソニックさんから出たS1R、S1はLマウントのフルサイズミラーレス一眼です。シグマさんもLマウントをやっていくことになると思いますが、ラインナップも含めて、どういった展開になりますか?」山木「当社も独自に、Lマウント用のレンズやカメラを開発していきます。パナソニックさんには動画系を含め、コアな支持層がたくさんいらっしゃって、ライカさんには独特のものづくりや画作りの思想がある。当社とはだいぶカラーが異なる2社とのアライアンスなので、トータルのシステムとしてはバラエティに富んだものになると期待しています。」
ooxo「3社が同じマウントを持つことには、どういった意味があるとお考えですか?」山木「実は当社も新しいミラーレス用マウントを開発していて、プロジェクトも進んでいました。ところがパナソニックさんから『フルフレームのミラーレスカメラをやるから組みませんか』と声をかけていただいた。当時、パナソニックさんはライカさんにも声掛けをしていたようで、結果的に3社でやることになりましたが、社内からは独自路線を貫くべきだという声も出ました。
結局、お客様の立場からすると、ライカさんやパナソニックさんのレンズやカメラが使えたほうがいいだろうということになったんです。最初からLマウントありきだったわけではなく、径もフランジバックもちょうど良いバランスだったものを使うことになりました。ただし3社が相乗りしてもシステムが正常に動くよう、これからアップグレードをして、より良いものにしていく予定です。」 -
写真上はAPS-Cサイズながら驚異的な高画質を実現したFoveon Quattroを搭載した『sd Quattro』。山木社長が持つレンズはシグマが解像力とボケ味にこだわり抜いて開発した『105mm F1.4 DG HSM | Art』。
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現在開発中のFoveonセンサーのフルサイズミラーレス一眼についても語ってくれました。
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ooxo「ポートレイト業界は最近、人口がとても増えました。ポートレイトに特化した製品などは考えていますか?」
山木「当社のレンズはコンセプトを明確にしているので、使用目的は意識します。例えば135mmや105mm、85mmといったレンズはポートレイトでの使用も多いでしょう。ならばディテールは出しながらも、ふわっときれいで柔らかなボケがほしい。さらには背景の色がガチャガチャしていると汚く見えるので、ボケの縁などコントラストの強いところに色が出る現象を抑えるようにしています。またボケがレモン型になることがありますが、なるべく綺麗な円形になるようにとかですね。」
ooxo「ミラーレスになってボディが小型化したことで、レンズが大きく重くなる傾向にあると思います。軽く小さいレンズの開発などは考えていますか?」
山木「当社はプロや、写真好きな方のために最高のギアを作ることを優先してきました。単焦点シリーズもだいぶ出揃ってきたので、ここからは色々な展開を考えています。他社よりも高性能、高品質を目指す一方で、もう少し気軽なものなども展開していきたいですね。」
ooxo「現在SNSを活用する世代に対して、シグマさんがアピールしたい強みや活動、展開などはありますか?」
山木「プロの方はもちろんですが、当社は真剣に写真に取り組む方々をコアユーザーと位置づけています。どの製品を手に取っていただいても、性能と品質と価格のバランスで、決して不満が出ないものを提供しているという自負はあります。さらなる高みを目指していくために、お客様からは忌憚ないご意見をお聞きしたいですね。」
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【TEXT 小藤 茜】
【編集 祐一郎】 -
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