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  • 【雑誌連動企画】X(cross)shooting…ロケレビュー
    舞山秀一×コシナ/Voigtländer APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical





コシナの“解像番長”の名を受ける広角レンズ
APO-LANTHAR 35mm F2 Asphericalで

舞山秀一が雪山ポートレートを敢行するX (cross)shooting!

今年の東京では殆ど雪を見なかった。夜の冷え込みも少なくなり、この冬はこれで終わりだね。とテレビで誰かが言っていた。……のにである。突然編集長から「雪山へ行くぞー!」と言われて何故か早朝の車上の人になっている。後部座席でフォトグラファーの舞山秀一さんとモデルのやまてさんが楽しそうにおしゃべりしているのを車窓から明けたばかりの街並みを眺めながら聞いているのだからPASHA STYLEは面白い(?)。

4月20日発売の雑誌「PASHA STYLE Vol.7」の人気企画「X shooting」。今回の協力メーカー、コシナさんから指名されたのは、最近ポートレートナビゲーターにお迎えした舞山秀一さんだ。50mmが高い評価を得ているAPO-LANTHARと同じコンセプトで開発され、4月9日に発売になったばかりのAPO-LANTHAR 35mm F2をいち早く使って雪山ロケを敢行する。これはすごい作品が撮れるに違いない! そんなことを思いながら一路雪原を求めて北上するのだった。



プロフォトグラファー
PASHA STYLEポートレートナビゲーター

舞山秀一 / Hidekazu Maiyama


写真家。広告写真、ファッション雑誌、CDジャケット、写真集等で人物写真の撮影を中心に活動する。2014年から九州産業大学芸術学部客員教授。

〔経歴〕 
1962年 福岡県生まれ。 
1984年 九州産業大学芸術学部写真学科卒業、(株)スタジオエビス入社。 
1986年 独立。 
1988年 第22回APA展 奨励賞受賞。 
1998年 イベント「ALIVE」開催。作品集「ALIVE」出版。


□ twitter:@hide0107 □ instagram:@hidemaimai
□ facebook:https://www.facebook.com/maiyama
□ site:https://www.maiyama.net
□ PASHA STYLE紹介ページ:https://pasha.style/article/1165


model:やまて
□ twitter:@yuna091012





三国峠を越えると世界が一変。

そこはまさに雪国。期待感も一気に高騰!




川端康成の書の通りトンネルを抜けると白銀の世界に一変する。東京から遥か3時間で目的地に足を下ろした。当日の天気予報では「雪のち晴れ」。少しだけ雪がちらついている程度のそんな天候だが、無彩色のグラデーションに包まれた景色が否が応でも雪原に近づいていることを感じさせる。道路脇の其処此処にうず高く立ち上がる雪壁を抜ける道々でも、軽いウォーミングアップシュートを繰り返す。寒いといえば寒いが意外と暖かいといえば暖かい。それはそうだ。撮影する側はそれなりの準備で来ている。こういう時モデルさんは大変だなといつも思うのだ。


舞山「もらった条件、タイミングの中で自分に何が撮れるのか。僕の作品撮りの全てに共通するテーマは“奇跡を探す”ということなんです。構図、光、表情……そういうことは僕の中で完璧に撮ることができる。ただそれ以外のその時にしか撮れない“ドラマ”を撮りたいし、それが起こる場所に行きたい。知った場所に行って、知ったことが起こってもワクワクしないでしょ? そういう意味で想定の外の出来事を求めて今回は雪山を選びました。ドラマを起こすトリガーとして“吹雪”の中で撮りたいなと。吹雪きすぎて何も見えないような、生の雪のフィルターで何を撮っているのかわからないくらいになれば面白いなと思ったんだけど(笑)。僕は僕自身が“見たことのないもの”を撮りたいので、7割くらいは計算をして撮影に臨みながらも、残りに遊びをもたせるんです。自分でも何が起こるかわからない部分を残したいと思っています。それから今回使わせてもらうレンズAPO-LANTHARはマニュアルレンズなので、ピントをどこに置くかということで表現が変わっていくから、そこも意識しながら撮影しました」


舞山さんと都内で落ち合うまではどんな撮影になるのか全く情報がなかった。アシスタントを含め複数名での撮影になるのだろうと勝手に想像していたところ、リアルは全然違っていた。フォトグラファーとモデルの1対1のガチンコ撮影。一切の無駄を省いた、ストロボもない、レフもない、(備品は送風機と黒布のみ:編集長担当)機材はソニーα-7RⅣとVoigtländer APO-LANTHAR 35mm F2 Asphericalのワンセットのみ。嗚呼、これぞポートレートの原点というスタイル。35mmという息遣いを感じる程の焦点距離で互いが火花を散らす瞬間が、今始まろうとしているのだ。時は来た。



どーーーんっ



素晴らしい。実に素晴らしいパノラマ。

心地よいまでのパウダースノーが敷き詰められた空間が眼前に広がり、奥のレイヤーには霞む山肌が見え隠れしている。ここでフォトグラファー舞山 vs モデルやまてのワンタイムセッションが始まろうとしている。



蝶のように舞い、蜂のように撮る。

舞山流ポートレートの目的地。


“奇跡の時”を求め、時折吹雪く雪を頬に感じながらどんどんと雪原へと足を踏みいれていく。舞山さんはモデルに移動する方向を指示しながら、動きながらどんどんシャッターを切っていく。数カット撮ったかと思った途端に「よし。ここで寝転んでみようか!」といういきなりの指示が飛ぶ。え? 衣装が濡れちゃうし髪も濡れちゃいますけど? スタートしたばかりのこのタイミングで? そういうことは最後の方にすることでは? と頭の中を駆け巡るクエスチョンマークの答えの一端は、後日聞いた舞山さんの話からうかがい知ることができた。


舞山「僕の写真は基本的に“覗き写真”なんです。踏み込んでいっているように見えても僕の存在は無視してもらいたい。いかにモデルの自然な瞬間を狙い撃ちするように切り取ることができるか。だからモデル自身が鏡を見て知っている顔とかはいらないんです。モデルは自分のいい角度、いいフォルムとかわかっているからキメてくるでしょ。プロだから当たり前なんだけど、キメてるカットはかっこいいよね。でもそれでは“ドラマ”は起こらない。」





大胆に見えて繊細に注意深くその瞬間を切り取る。そんな舞山さんのフォトセッション。要所要所でそこでのモデルの在り方、目線の送り方などを指示する。過酷な環境での撮影に、時にはモデルを気遣い、時には強く要求する。そして時に奇想天外な要求をし、モデルを崩していく。アドリブの応酬をしあうような撮影の中にあって、数少ないスパイスである送風機もいい仕事をしてくれる。(編集長担当) 送風機に吹き飛ばされた雪礫が針のような勢いでモデルの顔面を直撃すると、一瞬モデルの仮面が剥がれる瞬間がある。それすらも舞山さんの“奇跡を探す”ための手管であったりするのだ。





途中休憩をはさみ、つかの間のブレイク。前半の撮影カットを確認する舞山さんとやまてさん、編集長も満足気に話が弾む。撮影前半でかなりの撮れ高を確信した舞山さんは後半に入ると様々な試みにチャレンジ。走る! 飛ぶ! 転がる! 背景に敢えて黒布を貼り撮影したカットもとても印象的だった。(雑誌では未掲載。今後の記事で公開予定。乞うご期待!)雪山という単調になりがちなロケーションの中にも舞山秀一にしか撮れないシーンを探し続ける。


舞山「ある程度撮れてるなと感じたら予定調和にないことをやってもらう。寝転んでもらったり走ってもらったりジャンプしてもらったり。そこでうまく飛べなかったり、失敗してコケたりしているシーンがいい写真になったりすることもある。いかにキメを崩して崩して、思ってもいない瞬間にシャッターを押したりして。本質に近づけるか。そこから“ドラマ”が匂い立ってきたりすると思っているんだよね。だから僕は常にモデルの周りをぐるぐると虫のように飛び回ってる。その瞬間を逃さないように。」




舞山「僕にとっては撮影そのものがイベントだから、出来栄えも重要だけどファーストトライみたいなことにチャレンジできただけでハッピーだったりするところがある。送風機で雪を飛ばしたのはよかったね。今までやったことがなかったから(笑) 写真って最終的には見てもらうことが大切だけど、撮影という行為自体が楽しいじゃない。だから先にキメすぎていくと窮屈で自分も飽きちゃう。やったことがあることは安心感があるけど、逆に同じことばっかりやっていていいんだろうかという不安があったりとか。全然新しさを感じないなとか。それじゃあ楽しくないじゃない。だから今写真に夢中になっている人たちには、『自分の見たことのないものを探す旅、楽しいですよ』ということを伝えたいかな。既視感がないものを目指すということは本当に大変だから、最初はなにかのコピーでも全然いい。どう変化させるか、壊すかということまでを考えたコピーならすごくいいと思う。そうやりながら自分のオリジナリティを探していってほしいなと思いますね。既視感のあるものは褒められやすいけど、見たことのないものは褒められにくい。その恐怖と戦いながらいい具合に主流から外れたところにオリジナリティが見つかったりするんじゃないかな」


撮影を終え雪原を後にするその道中でも急にまた撮影が再開する。その一瞬のタイミングの中でも組写真が成立するようにバリエーションにも配慮しながら。常に色々なことを観察しながら“奇跡”を探し続ける貪欲な撮影は時間が許す限り続いた。(実は同日東京にとんぼ返りで撮影がある舞山さんなのです)






X shooting協力メーカー



今回撮影された作品は、雑誌PASHA STYLE Vol.7に掲載されています。
ぜひそちらと併せてお楽しみください。
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【text:kimihiro kawano】