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    作品コンセプトからお金の話までズバっと取材



自分の作品が認定を獲得するにはどうしたらいいのだろうか?

ワンランク上の作品を作るのはどうしたらいいのだろう? 

そろそろストーリー性のある創作系の作品撮りをしたい!


PASHA STYLEの特集記事を読んでくださっている方の中には、こんな思いを抱えて作品撮りのアイデアを練っている方も多いはず。


そこで今回はフォトディレクター西村毬乃さんを中心とし、フォトグラファー、ヘアメイク、モデル、スタジオとが結集した現場にお邪魔しました。さて、どのように作品は行われたのか。編集部サトーがレポートしたいと思います。



title:葬列


フォトディレクターとは?

作品撮りというと、フォトグラファー発信でスタートする印象が強い気がしていました。今回取材させていただいたチームはそうではなく、フォトディレクターの西村毬乃さんが作品撮りの中心人物です。

西村さんに伺うと、彼女はフォトグラファーでもモデルでもヘアメイクでもない立場。そこで人に自分の立ち位置を説明する時には“フォトディレクター”と名乗っているそうです。

では具体的に西村さんが何をしているかというと、今回は作品のコンセプトを考え、フォトグラファー、ヘアメイク、モデルを決め、最後の仕上げとなるレタッチも行っているとのこと。映画で例えるなら、作品全体を指揮する監督的な役割です。

西村さんが作品撮りを始めたきっかけは、PASHA STYLE認定作品展vol.1準グランプリを獲得された際の特集記事に掲載されているのでぜひご覧ください。



title:葬列


今回の作品撮りのはじまり

西村さんは普段関西をベースに活動していますが、今回の作品撮りは関東での実施。そのきっかけは『闇の王展2020』の出展だったそうです。

せっかくならば展示の開催地である関東で作品撮りをしたいと思ったのが、今回の作品撮りのはじまりでした。

それにあたり、まずは以前よりSNSで交流のあったヘアメイクアーティストのEllieさんとコンタクトを取り、そしてEllieさんを介してフォトグラファーの硯谷さんへとお話が進んだそうです。しかし西村さん自身が関東で撮影することは初めてだったこともあり、関東の撮影場所やモデル探しは全て手探り。実際、この「初めてが故の手探り感」は全てのフォトグラファーにとっても、一度は直面する悩みではないでしょうか。

今回、西村さんは撮影場所を硯谷さんに相談してみたところ、Photo&Art Spaceらんすみれさんを推薦してもらったそうです。実は硯谷さんのinstagramに掲載されている作品の大半が、そこで撮影されたもの。硯谷さんの作品を見て密かに「いつからんすみれさんで撮影したい」と思っていた西村さんは、喜んで即決したそうです。

ヘアメイク、フォトグラファー、撮影場所が決まり、最後はモデル。数名の候補が上がっていた中から、SNSで交流のあったSayukiさんに決定。

このような過程を知ると、作品撮りにおいて今はSNSが重要な役割を果たしていると言えるのではと感じました。それぞれ、SNSでの交流はそれほど深かったわけではないメンバー同士が、写真を通じてのアクションだったり、コメントだったり、些細なものをきっかけとして、それが積み重なりリアルに繋がっていく。現代の作品撮りの特徴ではないでしょうか。

さらにいうと、コロナ禍もあり、顔を合わせての打ち合わせが難しい昨今。SNSはその問題も解決してくれるように思います。対面での打ち合わせが出来ない分、LINEなどで撮影当日までイメージの共有や、コミュニケーションは大切にし、作品撮りの計画は進んだそうです。


作品コンセプト

西村さんがコンセプトを考えるのに参考にしたのが硯谷さんのinstagram(@akihirosuzuriya)に並ぶ作品群。硯谷さんの作品から、”静かなのに多くを訴えかけてくる印象”を受けたとのこと。その印象とヘアメイクのEllieさんの持つ技術がどこでいちばんマッチするのかを考えて決まったのが作品のタイトル「葬列」だったそう。

儚げで強く、沈黙が物語る。

そんなコンセプトにしたかったということでした。




ヘアメイクの話

作品『葬列』を見た時に印象に残るのが、モデルさんに施されたヘアメイク。

そのテーマはアジアのオリエンタル。どこの国かわからないが、民族っぽいものを連想する仕上げになっているのが特徴。

ヘアメイクを担当したEllieさんにお話を伺うと

「正当な和を作ると結婚式のようになって面白くなくなってしまう。今回は和の中にどういう風に洋風なものを取り入れるのかを考えました。メイクも目元の赤い部分とリップだけだと普通になってしまうので、チークの入れ方を少し工夫しました。正当な和のヘアメイクを部分的に崩して面白いデザインを加えることで、和と洋を融合させています」とのこと。



title:葬列


作品創りにかかるお金の話
作品撮りに関しては作品のテーマはもちろん気になります。

……だけど、ぶっちゃけお金の話。気になりませんか? 

そのあたりを西村さんと硯谷さんにズバっと聞いてみました。


西村「基本的に作品撮りの必要経費は完全折半です。経費は主にスタジオ代になりますが、あとは各々の技術の持ち寄りで成り立っています」


硯谷「SNS上でよく完全無償とか相互無償とかいう言葉を見かけるけど、なんとなく違和感を感じますね。昔からプロのカメラマンとプロのモデルが作品撮りをする時にお金は発生しないのが普通。

例えば、『新しいカメラが手に入ったけど撮影しない?』とモデルさんにお願いして、モデルさんが『じゃあ私はこういうの試したい』メイクさんが『だったら私はこういうのしてもいい?』という感じで、みんなのやりたいことをやれば全員がWin-Winになる。だから作品撮りには違いないけど、ボクらの時代は"テストシュート"という言葉を使っていたし“テストシュート”といえば“無償”というのは暗黙の了解だった。ただそこにはコンセンサス、つまりそれぞれのやりたいことへの同意、相互理解が絶対条件だった。それとは違って、例えばボクが”どうしてもヌードを撮りたい”と、こちらの主張を押し通した場合、それは“ボクの”作品撮りになってしまうわけだから、報酬を払わなければいけないよね。

SNS全盛の今の時代に則して言えば“撮影に参加したけど私(僕)のイメージには合わないからSNSには投稿しないかな……”とかWin-Winのバランスが崩れた時には、やはり協力してくれた方々にはそれなりのお礼をしなくちゃって感じかな」



『Photo&Art Spaceらんすみれ』はこんなところ


洗足駅(東京都目黒区)から徒歩1分の位置にある『Photo&Art Spaceらんすみれ』は元カフェのアートスペース。店内にはカフェ時代から使われているビンテージな家具が所狭しと収納されている。300年ぐらい前の本やファイヤーキングの食器などは撮影の小道具としてピッタリ。オーナーの山中さんにスタジオ代が今回無償になった経由などをお聞きしました。


山中「無償提供は親友である硯谷さんのオファーだからというのはもちろんなのですが、一番の理由は『素晴らしい作品創りの場に参加させて貰えた』という体験にお金以上の価値を感じたからです。Photo&Art Spaceらんすみれは僕の知り合いのみが使えるスペースで、僕がArtだと思うことに貸し出すアートスペースです。HPや広告、宣伝とかは一切やっていません。僕とはSNS(instagramtwitterfacebook)のみで繋がれます。通常は1時間3500円です。学生さんは応援したいので、無料での貸し出しなども行っています。基本的には紹介のみで繋がるシステムなのですが、学生さんで僕と面識がない人はまずはロケハンをしてもらって僕と面識をもってから使って貰うようにしています。なぜ無料にできるかと言うと、僕の中で“スタジオ経営の山中さん”という肩書がないんです。僕の多動力、思考はPhoto&Art Spaceらんすみれを中心に様々な世界の方との“ハブ”の様な場にしているからなんです。具体的なハウツーを知りたい方は直接DMで!!(笑)」





【STAFF】

photo director:西村毬乃

instagram:@marino.nishimura


photographer:硯谷昭広

instagram:@akihirosuzuriya

facebook:https://www.facebook.com/akihiro.suzuriya

site:https://asdpc.com/


model:Sayuki
instagram:@sayukiworld


hair&make up:Ellie
instagram:@ellie.hair_make

site:https://www.makelie.info/


Studio:Photo&Art Spaceらんすみれ
instagram:@rpjgs865kou

twitter:@rpjgs865

facebook:https://www.facebook.com/CafeRansumire

 
 
 

 

取材後記
PASHA STYLE認定作品展で受賞経験のある西村毬乃さん、ポートレートナビゲーターの硯谷昭広さん、PASHA STYLE Book Vol.7のPICK UP ARTISTSにも掲載されているEllieさんという、PASHA STYLEと繋がりの深いメンバーでの作品撮りの様子はいかがだったでしょうか?

作品撮りのチームの結成から作品コンセプト、お金の話まで、なかなか聞けないことをズバっと聞いてみました。皆さんには、これを参考に作品撮りを楽しんで貰えると嬉しいです。

 

 
今回、紹介した作品『葬列』のアナザーストーリーがソニーα7Cのレビュー記事で紹介させていただいた作品です。またご覧になられていない方はぜひ。
特集記事「NAVIGATOR’S Shooting 硯谷昭広 × Sony α7C




text:SATO TAKESHI