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  • 神奈川県にあるシグマの本社で直撃取材

  • 【不定期連載】今さら聞けないカメラあれコレ
    第2回 レンズのデータの読み方

  • レンズの基礎的なことをわかりやすく解説してもらいました

    • 35mmフルサイズのセンサーは横36mmで縦24mm。対角線は42.26mm。MTFの横軸はセンサーの中心をゼロとしてスタート。対角線の半分の長さが21.63mm

    • 写真は3本ですがMTFの図では1mmの中に10本と30本で性能を表示。放射方向(サジタル)がS。同心円方向がM(メリジオナル)。MTFでは点線でMを表示。

    • 赤線が10本/mmの数値で、緑線が30本/mmの数値。本/mmとは、1mmの中に白黒のペアが何組あるかを表します。10本/mmの場合、1mmの中に10組の白黒のペアがあることを意味します。実線がS方向(放射方向)、点線がM方向(同心円方向)を表しています。赤線が縦軸の1に近いほどコントラストやヌケの良いレンズで、30本の緑線が1に近いほど解像度の高いレンズといわれています。横軸の数字は画面の中心から距離を表しています。レンズ全般の特長として中心から画面の外に行くほどコントラストも解像度も落ちていく。グラフ

  •  前回はレンズのカタログに載っているデータを勉強したのですが、今回はもう少し踏み込んだデータを見てきたいと思います。
     
     レンズを購入する時に「焦点距離とかレンズの明るさはわかるけど写りは買ってみないと~」と思っていませんか? 実はメーカーのカタログやHPにはMTF曲線という図が載っています。この図が何を表しているのかを理解できれば、そのレンズがどのような特性をもっているのかが理解できます。前回に引き続き、シグマの小山さんにお話を伺いました。

     シグマでは2つのMTFを掲載しています。ひとつは波動光学的MTF、もうひとつは幾何光学的MTF。光というと直線的なイメージがありますが、実は波の特性があります。その波の特性を考慮したのが波動光学的MTFで、波の特性を無視したのが幾何光学的MTF。今回は、実際のレンズのデータに近い波動光学的MTFを使ってデータをみて行きたいと思います。
     MTF曲線の縦軸がコントラスト表しています。横軸はセンサーの中心からどんどん離れていく距離が記されています。レンズを設計する時には限りなく1に近づくことを目指して設計。ちなみにコントラストが0に近づくとグレーになっていき白と黒が分離しなくなります。

    赤い実線と赤い点線の2本は、1ミリあたり白黒のペアが10組あることを示す。緑の実線と緑の点線は、1mmあたり白黒のペアが30本あることを示す。一般的に10本/mm(赤)の数値が1に近いほどコントラストとヌケの良いレンズ。30本/mm(緑)の数値が1に近くなるほど解像度が高いレンズといわれています。

    難しいですよね。簡単に言うと赤線も緑線も1に近い方がよくて、なおかつ赤と緑の線の間が短いほうがよい。もっというなら実線と点線が重なるのが理想で、さらに画面端に行っても数値が落ちないのがいい。ちなみにどのレンズでも一番性能が出るのは中心で、端に行けば行くほど解像度もコントラストも落ちていきます。

     ズームレンズの場合は焦点距離で特性が変わっていくので、どのメーカーでもワイドとテレ(望遠)のMTF曲線を掲載しています。

  • シグマの場合特殊なレンズに色をつけて表示。ズームレンズは性能を出すためにレンズの枚数が増えて複雑な設計になりやすい。レンズの枚数が多いと性能が良さそうにみえるが性能を見るのはレンズの枚数ではなくグラフで。

  • シグマではFoveonセンサーを使った測定器A1を使ってレンズを測定。写真はより進化したFoveonセンサーを搭載したミラーレスカメラ シグマsd quattro

  •  シグマではMTFだけでなく、周辺光量のデータも開示しています。中心の光量を100%とした時に、周辺の光量がどのくらいになるのかを数値化しています。周辺の光量が少なすぎると画面の四隅が暗い写真になり、これは絞りを開けた時に顕著で、図を見るとわかる通り、絞り込んでいくと光量が増えていくのがわかります。ちなみに大口径になればなるほど、周辺光量は落ちていくのが特長です。
     青線は絞りが開放F1.4の場合で、画面の端に来ると光量が34%ぐらいまで落ちています。赤線がF2.8で黄緑がF5.6の数値。F1.4から2段絞ったF2.8の赤線と4段絞ったF5.6の緑線では、ほとんどデータが変わらなくなっているのがわかります。つまり2段以上絞れば周辺落ちの数値が変わらなくなるのがわかるのです。
     
     
     さらに撮影した時にどのように歪むのかを数値化したディストーションチャート(effective distortionとrelative distortion)も公開している。このチャートをみると写真を写したときにたる型に歪むのか糸巻き型に歪むのかなどの特性を知ることができる。
     
     こうしたレンズ特性を理解しておけば、作品を作る時に画面の隅々までコントロールする事ができる。

    • 周辺光量の設計値がこちら。周辺光量は絞りを絞るほど周辺落ちが改善される傾向。図の場合は二段絞ったF2.8(赤点線)まで絞るとかなり改善されているのがわかる。

    • レンズのゆがみをチェックするディストーションチャート。点線は歪曲収差がゼロの理想的な格子を写したイメージ。赤線は実際のレンズデータ。シグマのレンズが高性能すぎて図ではわかりませんけど(笑)。図はeffective distortion

    • どれだけ歪曲収差が発生しているかが像高ごとに見ることができるrelative distortion。横軸に理想的な像高をとり縦軸にディストーションの大きさを表示。画面の外に向かうと若干プラス側に伸びているのがわかる。プラス側に数値が動くと糸巻き型、マイナス側に数値が進むと樽型に歪む。