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  • サカニコフが初めて撮ったフィルム写真

  • ロシアン(カメラ)に魅せられて Vol.2
    (フォトグラファー/Sakanikov)

    • 奥さんと出会ったとき

  • 初の写真展開催( https://pasha.style/article/870 )から1週間が経過。今週は展示の達成感や余韻に浸りっぱなしで、季節の変わり目という事もあり、37度1分の微熱も出ました。
    写真展の3日間、お忙しいところ足を運んで下さった皆様には改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

    さて、今回は前回の続き、Vol.2。このテーマでの寄稿は多分最後。
    ロシアンカメラが僕自身にもたらした人との繋がりについて書きたい。
     
     
    前回の記事で、僕の妻との出会いのきっかけは「カメラ」と書いた。
    (ロシアン(カメラ)に魅せられて Vol.1 参照:https://pasha.style/article/870

    7年前のロシア・ウラジオストク留学中、フィルムカメラにどハマりしていた僕は、ロシアのWeb掲示板で旧ソ連製のフィルムカメラが売りに出されるや否や、売主に即連絡。多い時で8台くらい保有し、半分ブローカーのような事をしていた。
    保有する喜びもあったけれど、買ったからには使わねば、と現地で売っていたFujiやKodakの安いフィルムで撮った写真をFacebookなどに上げていた。
    すると「私もフィルムカメラが欲しい!」とコメントをしてきた、大学附属のロシア語学校の先生。
    僕は直接教えてもらった事はなかったが、彼女の顔は知っていたので「買ってきてあげるよ」と返信。すると彼女は「一緒に買いに行きたい」という。なので二人で買いに行く事になった。

  • 個人から譲り受けるため市街地で先生と待っていると、やって来たのは若い女性。おそらく彼女の親が持っていたカメラで、タンスの肥やしになっていたのだろう。
    持ってきたゼニトETの露出計は故障していたけれど、シャッター幕の動きは悪くない。格安で譲ってもらえる事と、先生の顔に「早く使いたい!!!」という文字が書いてあった事もあり、売主にお金を渡して、テストシュートがてら先生と散歩へ出た。

    写真はいつからやっているのか、好きなアーティストの話、旅行はどの国へ行った事があるかなど、色々な話をしながら当時は登れた屋根の上を散歩した。
    帰り際にはバス停まで見送ったりして、あの雰囲気は学生に戻らないと味わえないなぁと、既婚社会人である自身の現状と比較し唇を噛みながらキーボードを叩く今。
    この出会いをきっかけに先生とはお付き合いを始める事になり、遠距離恋愛含む4年の交際を経た後に結婚した。高校時代に漠然と抱いていた「ロシア人と懇意になりたい」という想いは、ある意味、初志貫徹し実現した事になります。

    • 奥さんとのその後

    • 奥さんとのその後

    • 奥さんとのその後

  • さて、フィルムカメラを手に日本に戻った僕は、引き続きフィルムで撮り歩きます。
    家族、友人、モデルさん、街行く知らない人など、本当にいろんな人を撮らせてもらったし、いろんなフォトグラファーさんと繋がりを持ちました。大学卒業後僕は北海道から上京したわけだけれど、本当に東京はすごい。フィルム写真を撮っている人もたくさん。写真をしていなかったら、東京でこれほどまでの知り合いは出来なかったと、今考えると少し怖い。
    一方でモデルの女の子を撮っていると妻も御機嫌斜めになるので、友人のフォトグラファーを無理矢理誘って一緒に行ったり……。諸々大変な事がありつつも、カメラライフをエンジョイさせてもらっています。

    そして、今回の写真展。展示した写真は全てフィルム。
    普段あまりプリントをしない方だが、大判に刷るとやはり良いなあとしみじみ感じる。スマホの画面ではない、実体に起こす事で観る人への訴求力がぐっと変わるものだと改めて実感しました。
    ロシア・ウラジオストクに興味を持って帰っていくお客さん。
    初めてお会いした方からも「素敵だね」「感動した」と言ってもらえたり。
    自身の作品を通して自分の想いを誰かに伝えられた事は、これまで撮ってきた写真、映像作品に対する自信に繋がった。
    気持ち良かったです……端的に言うと!
    写真展に嵌ってしまいそうです。先人たちもこうして虜になったんでしょうね……。

    展示を通して、写真を撮る上での自分のスタイルが少しはっきりしてきました。ポートレートも好きだし、ストリートスナップも好き。
    どちらかを取るわけではなく、普段からカメラを片手に日々発見をフィルムに収めよう。撮りたいと思った人には自分からアプローチしていこう。
    今後より多くの人と繋がっていけば、またどこかで大きなきっかけが生まれるかもしれない。
    今回HMA・藤原朋哉くんと一緒に行ったウラジオストク旅行のように。

  • さて、ロシアンカメラから始まった様々な人との出会いについて書いてきましたが、どうしてフィルムなんだろうと頭の片隅でずっと考えていました。
    究極的に僕はフィルム写真が持つ未完成の完成感が何とも言えず好きで。
    フィルム選びや印画紙にこだわれば見た目の画質も向上させられるかもしれないが、結局は粒子の集合体。
    今のデジカメのピクセル数には遠く及ばない。けれども、それが自分の事をずっと待っていてくれているような気がして。
    東京で就職してから、一時期フルサイズのデジイチに靡いた時も最終的にはフィルムカメラに戻ってきてしまった。
    常に前へ前へと進んでいく現代社会において、新旧関係無く心を落ち着けられる場所がフィルム写真で。同世代でフィルム写真を撮られている方でもこんな感情を抱いている方はきっといるんじゃないかと時々考える。
    ロシアンカメラはまさにその最たる例。
    ソ連という過去の国が作り出した(パクリも多いが)名機の数々。
    ロモのカメラを握る度、そのカメラを購入したサンクトペテルブルクの街並みの風景が頭によぎる。
    仕上がった写真に残るトンネル効果は、不完全である事の美しさを体現しているように思える。

    さて、
    時が止まった技術
    を使って、
    次は何を撮ろう?
     

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