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  • 【WEB企画】H&Y × JIRO YABUZAKI & PASHA STYLE〜3【FINAL】
    藪崎“スーパーリアル”次郎に聞く!ランドスケープとポートレートと私




お願いがあるんだ。
風景写真家にポートレートを撮ってくれという君。
最高の作品を撮ってほしいなら
ちゃんとフィルターを用意してほしい。
まずは完璧な風景を撮りきる。
そしてそこにモデルを溶け込ませる。
そうすれば僕が思う
“スーパーリアルランドスケープポートレート”の完成だ。

(by Jiro Yabuzaki)



撮影が全て終わった後、スタッフ全員で行った避暑地のおしゃんなファミレスで見た写真の仕上がりがついに送られてきた。カメラのプレビューで見ただけでも「これは素晴らしいものになる……」と思ってはいたが、しっかりとした後処理が施された作品の存在感はやはり凄いものがある。現在、風景写真の世界で強い支持を受けている写真家が本気で撮ったポートレートの今。藪崎次郎さんのコメントと共にぜひ楽しんでもらいたい。



作品 ①


K-SeriesドロップインCPLフィルター(1/3)
K-SeriesバランサーGND16
35mm、SS0.8、F11、ISO100



作品 ②


K-SeriesドロップインCPLフィルター(1/3)
K-SeriesソフトGND8
30mm、SS0.5、F13、ISO200


風景写真家として
風景を撮る者としての私のポリシーは、「作品の中には一切の人工物を入れない、人を入れない」で作品を撮るということです。今回はポートレート専門メディアのPASHA STYLEさんとのマッチングということもあり、風景写真と向き合いだしてからは初の「風景に人物を入れて作品を撮る」という試みというかチャレンジで、ポートレートも撮っていた過去を久しぶりに思い出してワクワクしましたね。撮影時は曇天の早朝で光がとても弱く、更に作品①、作品②では森の中ということもあり光が届いてこない状況でした。風景だけを狙う場合はシャッタースピードを遅くすればいいのですが、モデルさんを入れて撮る場合はあまり遅くもできない。その辺りのバランスが思案の為所でしたね。

CPLは隠し味
今回のすべての作品では、まずH&Y K-SeriesフィルターホルダーにドロップインでCPLフィルターを1/3ほど効かせる感じで入れています。今回に限らず私のほぼすべての作品でCPLフィルターを使用しているのですが、100%反射を抑えるような使い方はまずしません。大体1/3〜1/2程度反射を抑えるように使います。100%反射を抑えてしまうと微細な光の反射が拾えなくなってしまい、結果として対象物の立体感が削がれ、のっぺりとした仕上がりになってしまう。余分な反射を抑え被写体のディテールや色を捉えつつ、立体感を損なわない塩梅で隠し味程度に留める使い方がベストだと思います。弱い光の中での撮影だった今回は使いませんでしたが、H&YのCPLとNDがひとつになった「CPL/NDフィルター」シリーズもいいアイテムですね。

GNDは光を読んで
そして更にグラデーションNDフィルターを使って風景の露出差をコントロールし“風景写真”として完成させます。スーパーリアルランドスケープポートレートとしてはここがまず完璧でなければいけません。作品①と②は森の中の同種のシチュエーションですが、木々の密集度の違いで差し込む光の量に差があります。その為、作品①では最近発売されたバランサーGNDを、作品②ではソフトGNDを使っています。バランサーGNDはソフトGNDよりも滑らかにND効果が掛かるので、微妙な露出差を調整する場合は積極的に使っていきたいアイテムです。


それからGNDフィルターを水平に使うことも少ないですね。太陽はどこにあってどの方向から光が当たっているのか、フレーム内のどこを出してどこを抑えたいか、ファインダーを覗きながらベストの位置、角度を探っています。例えば作品①では画面右斜め上から左斜め下に向けて光が入ってきていたので、フィルターを傾斜させながら使っています。そうすることによって光の方向性による露出差をできるだけ抑えているのです。







作品 ③


K-SeriesドロップインCPLフィルター(1/3)
K-SeriesソフトGND8
26mm、SS1/3、F13、ISO100


秒との戦い
作品③では大好きな滝と渓流というシチュエーションでのポートレート撮影にチャレンジしてみました。まずは風景写真としてこのロケーションでの写真を完成させるために考えることは、水の流れの表現の仕方です。「止める」のか「流す」のか。流すならば水流の筋を「残す」のか「残さない」のか。現在の風景写真でのトレンドは「水流を流しながらも筋は残す」という写真。こうすることで滝や渓流の美しさを出しながら、ダイナミックさも表現できます。この場合のシャッタースピードは概ね0.1秒〜0.5秒くらいになります。さて、足場の定まりにくい濡れた岩場でモデルさんは止まっていられるか。シャッタースピードとの戦いですね(笑)。このシーンでは本当にモデルのろーざさんに頑張ってもらいました。凍える水の中で躊躇することなく凛として存在してくれたプロ根性には、作品で応えるしかないと気合も入りましたね。

音との戦い
しかしこのロケーションでは耳を覆い尽くす水音のエコーで、モデルさんとのコミュニケーションが凄く難しかったです。たった数メートルしか離れてないのに全然声が通らなくて結局ゼスチャーで意思疎通。私が手を上げたらモデルさんに止まってもらいシャッターを切る。止まっているつもりでも体が揺らいでしまうので、何カットもトライしてもらいベストの作品を残すことができました。仕上げのレタッチでは“水”は少しブルー系に振り、“人物”については少しイエロー系に振って、背景と人物の分離を良くしモデルがより引き立つように調整してポートレート作品として完成させています。

拘りとの戦い
弱い光の中、パンフォーカスで捉える風景の中に人物を入れ込んだ撮影は、被写体ブレとのせめぎ合いでもありました。「風景は風景、人物は人物で撮って合成すればよいのでは?」なんて声も聞こえてきそうですが、私は一発撮りに拘ります。リアルなフィルターワークにしても、現像やレタッチするタイミングで段階フィルターなどで調整すればいいという声が風景写真界隈からですら聞くことがあります。でもレタッチなどの後処理は基本的にはオリジナルデータを壊す行為です。必要なレタッチはありますが、その手数はなるべく少なくしたいと思っています。私がそう考えるのは最終的なアウトプットを「紙=プリント」に置いているからで、パソコンやスマホなどのモニター内で完結するなら必要のない拘りかもしれませんね(笑)。できることは現場ですべて行い、細心の注意を払ってセンサーに取り込んだ光の全てを損なうことなくプリントに定着させたい。風景写真家としての私の作品とはそういうものです。




風景とポートレートと私
今回の“スーパーリアルランドスケープポートレート”チャレンジのWEB企画にH&Yさんと共に参加させていただいて、改めて自然と対峙する風景写真の素晴らしさと、心の奥底に眠っていたポートレートの楽しさに気付かされました。風景写真は同じ場所でも、訪れる時々で二度とは同じ写真が撮れない一期一会のもの。それを大切に丁寧に切り取るという軸足はしっかりと持ちながら、人物を溶け込ませるように撮る今回のスタイルは今後も続けてみたいな……と思わせてもらいました。それに全ての本番が終了した後、三脚の足枷からカメラを解き放して遊びながら撮影したポートレートがとても楽しかった。この初期衝動にも似た気持ちを大切に、モデルをメインにした所謂ポートレート撮影も再開してみたいなという思いが沸き起こっています。年明けの合同写真展「The World」では今回の作品も展示する予定ですので、ぜひ“プリント”を観に来てほしいですね。


1回目の記事 ▶▶▶「3人のスペシャリストが集まってなんかする会議 in 会議室
2回目の記事 ▶▶▶「いざ妖精の棲む森でスーパーリアルランドスケープポートレート!




photographer:藪崎次郎
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lighting:ooxo
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model:秋乃ろーざ
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styling:ユコ
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special supporter:H&Y Filters Japan



text:Kimihiro Kawano